『アトムの童』これまでの日曜劇場との違いは? ゲーム的マインドがもたらすメッセージ

 銀行が資金繰りを妨害し、裏切り者が現われ、仲間割れするところまではいつもの日曜劇場である。しかし、『アトムの童』では内通者の探索に時間をかけず、正体も簡単にばれる。深刻なダメージを与えた相手をあっさり許すし、味方同士の対立も笑いにまぎれて解消される。シリアスと笑いのバランスがこれまでの作品と異なっていて、日曜劇場の枠組みを用いた新ジャンルを見ているようだ。たとえるなら、おもちゃのジオラマというアナログ素材をデジタルに変換し、キャラクターとプログラムを実装するようなものである。

 それを可能にするのが本作の持つゲーム的なマインドセットだ。例外もあるが、一般的にゲームではステージが上がるごとに難易度が増す。クリアできなければゲームオーバーになる点で、プレイヤーにとって真剣勝負である一方、敗れてもまたプレイすることは可能だ。ゲームなんだから楽しめばいいし、何度やり直してもいい。人生とゲームは別物だが、一度失敗したくらいで全てが終わるわけではないというポジティブなメッセージが根っこにあり、それが作品全体に楽天的なムードをもたらしている。ふたたびデータを消去しに来た鵜飼が押したのが、「キャンセル」ではなく「再試行」だったのは象徴的だった。

 喧嘩しても本音でぶつかって仲直りする那由他と隼人の男2人のわちゃわちゃ感だったり、オダギリジョー演じる悪役・興津の底知れない不気味さなど従来の日曜劇場をアップデートする『アトムの童』だが、もう一つ重要なメッセージとして、好きなもので壁にぶつかった時、どうやって突き抜けるかがある。その答えを那由他と隼人、海はすでに知っている。自分が楽しめることを大事にすれば、自ずとあるべき場所に到達する。以上を踏まえた冒頭の問いに対する回答は、ゲーム制作における最悪の事態、それはゲームを楽しむのをやめてしまうことではないだろうか。

■放送情報
日曜劇場『アトムの童』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:山﨑賢人、松下洸平、岸井ゆきの、岡部大(ハナコ)、馬場徹、栁俊太郎、六角慎司、玄理、飯沼愛、戸田菜穂、皆川猿時、塚地武雅(ドランクドラゴン)、でんでん、風間杜夫、オダギリジョー
ナレーション:神田伯山
脚本:神森万里江
演出:岡本伸吾、山室大輔、大内舞子、多胡由章
プロデュース:中井芳彦、益田千愛
音楽:大間々昂
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/atomnoko_tbs/

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