山田杏奈×奥平大兼、“玄人に愛される”WOWOWドラマへの想い 「届くところに届く」
山田杏奈と奥平大兼がW主演を務める『WOWOWオリジナルドラマ 早朝始発の殺風景』が、11月4日よりWOWOWで放送・配信中だ。
青崎有吾原作の“密室型”青春ミステリーを連続ドラマ化した本作。ある日、話したことがないクラスメイトの殺風景(山田杏奈)と加藤木(奥平大兼)が、早朝始発の列車で遭遇する。ガラガラの車内で2人は、“気まずさ”を感じながらも、わざわざ始発に乗る理由や、相手の思惑を探っていく……。
殺風景と加藤木の物語を中心に、新進気鋭のキャストが登場する全6話。徐々に解き明かされる真相や、腹を探る心理戦が見どころとなっている。
放送が近づくにつれて期待も高まる中、主演の2人にインタビューを実施。殺風景と加藤木の微妙な距離感や、長台詞を含む会話劇をどう乗り越えていったのか、さらには長年愛されるWOWOWドラマの印象についても聞いた。(浜瀬将樹)
殺風景×加藤木の二人芝居
ーー脚本を読んでの感想を教えてください。
奥平大兼(以下、奥平):役として考えたときに、加藤木という役は想像できたんですけど、殺風景という役は想像がつかなかったです。2人のかけあいや、どうやって撮影するのか楽しみでしたね。
山田杏奈(以下、山田):作中に「青春はきっと、気まずさでできた密室だ」という言葉があるんですけど、キャラクターたちがもがくさまが疾走感ある感じで描かれていて、どんどん読み進めてしまいました。殺風景をどのように演じていこうか、すごく楽しみでした。
ーー奥平さんはよく「役づくりをしないで臨む」とおっしゃっていますが、“殺風景”としての山田さんと対峙してどんな印象を持ちましたか?
奥平:今回演じる加藤木という人物は、殺風景というフィルターを通して、視聴者の方に観られることもあるのかなと思っていて、加藤木の会話の繋げ方、台詞の間、仕草は、間違いなくその場にいる殺風景を見てできたものでした。
山田:「役をつくってこない」と聞いてとても驚いています。私は自由にやらせていただいていたし、お芝居の中で加藤木とちゃんと話せている気がして楽しかったので、すごく柔軟だと思いました。
ーーほぼ2人芝居のような形です。長台詞もあったかと思いますが、工夫した点があれば教えてください。
奥平:ずっと同じ位置にいて動かないとなると、観ていても飽きちゃうじゃないですか。会話劇が面白い部分だと思ったので、普段より“台詞”を意識して、会話のテンポや空間をどう表現すればいいか、どう面白くしようかと考えていました。
山田:どうしても説明台詞になってしまうところが多いので、そこをどうにかして説明にならないように、と意識しました。“ここのタイミングでどう繋げれば違和感なくスルッと聞けるかな?”とか、いろいろ考えていましたね。
ーー監督から受けた指示で印象的なものは?
山田:「加藤木のことを“かとぅーぎ”って呼んでくれる?」と言われました(笑)。それがいいスパイスになっているなと思います。
奥平:監督からは「加藤木が殺風景のことをどう思っているのか意識してほしい」と言われました。果たして好きなのか、友達として助けたいのか、別の理由があるのか……明確な答えは分からないですけど、自分の中で理由を持ってやったほうがいいなと思っていました。
ーーそんな2人の関係性についてどんなことを感じましたか?
奥平:本当に不思議ですよね。加藤木を演じる中で、どういう距離感なのか想像していましたけど、たぶん明確に“好き”とか“友達として”とかではないというか……。ただ、現場では「多少は好きなんじゃないの?」とは話していました。100%好きではなくても、半分とか3分の1くらい好きなんじゃないかなって。
山田:最終回に殺風景と加藤木がある会話をするんですけど、その殺風景の台詞がすごくかわいいなと思いました。いつのまにか加藤木のことを、“自分のことを大事にしてくれる存在”に思えている。それを自覚できる関係性ってなかなかないだろうし、2人の中で何か気持ちの変化があったんだろうなと思いました。
ーー役から離れたお互いの印象についても聞かせてください。
奥平:同世代の役者さんの中で、山田さんは共演してみたいと思っていた役者の一人でした。どういうお芝居をするのか気になっていましたし、共演がすごく楽しみでした。
山田:映画『MOTHER マザー』(2020年)や、ドラマ『恋する母たち』(2020年/TBS系)でお芝居を拝見していたので、“あのときの方だ”って。事前に、どういう方なのか調べてみると年下でビックリしました(笑)。お芝居も素敵だなと思って拝見していたので、共演できて嬉しかったです。
ーー作中は気まずい2人の関係性でしたが、現場の雰囲気は良好だったと。
山田:気まずかったですか(笑)?
奥平:だとしたらイヤだな~(笑)。最初はよそよそしい空気がありましたけど、長く大変なシーンを共に過ごしたのは大きいですよね。そういう意味では“共に成し遂げた人だ”という感覚です。あと、僕、撮影の合間とかに寝てたんですよ。
山田:公園で寝てた! ビックリした~。
奥平:そのとき、空き時間に寝るのにすごくハマっていて。
山田:公園のシーンで何時間か空きがあったとき、奥平くんに「何してたの?」と聞いたら「そこの原っぱで寝てた」って。野生児だなと思いました。
奥平:お芝居するときはテキパキやらないといけないから、体力回復と、あと長台詞を覚えていました。
山田:私は長台詞をぶつぶつ読みながら覚えていたんですけど、ちょうどそのころ写真集のサイン書きがあって。サインを書きながら台詞の練習をしていました。
――2人が学生だとして、殺風景や加藤木がクラスにいたとしたら仲良くなれそうですか?
奥平:いい子なんだろうけど、殺風景とは関わりたくないかな~(笑)。
山田:私も(笑)。深入りしようとは思わないかも。
奥平:加藤木とも仲良くなれなさそうですよね。2人とも悪いヤツ人じゃないんですけど、仲良くなるのが難しそうだし、お互い理解しあうのにすごく時間がかかりそう。“ぜひ友達になりたい!”という人ではないかな。
山田:高校って、最初は身内で固まろうとするし、仲良くなったグループでいることが多いから、クラスで喋ったことない人にわざわざ話しかけてみよう、という人は少ない気がします。
奥平:入学式で仲良くならない限り難しそうですね。
――ただ、話してみるといい子なんですよね。
奥平:“どういう子なんだろう”って気になるし、殺風景とは話してみたいなとは思います。
山田:名前が“殺風景”だしね。
奥平:一回は言いたくなる名前ですよね。
山田:もしクラスにいたら「殺風景さん!」って呼んでみたい(笑)。