細川岳が『舞いあがれ!』で示す俳優としての誠実さ “実在感”へのこだわりが光る
「なにわバードマン」編は舞にとっては重要なものだが、やはり物語上は通過点である。サークルメンバーも多い中、そのような設定の中でキャラクターを立ち上げるのは難しそうだ。前に出すぎても、控えめであり過ぎてもいけない。“チーム感”を大切にしつつ、演じる“個”も大切にしなければならないのだ。
細川は、「自分たちで作った飛行機が飛ぶ瞬間を何度も想像し、たった一度のフライトのために何か月も手を動かす。現場に行ってそれを実感することが、玉本という不器用な人物を演じる原動力という気がしています」と語っている(※)。(当たり前のことだが)俳優とはただセリフを覚え、カメラの前で口にすればいいものではない。劇中の世界を体現している“現場”にて、演じるキャラクターが目や耳にしてきたはずのものを“実感”することが重要だ。そしてその“実感”は、視聴者にとってそのキャラクターの“実在感(リアリティ)”に繋がる。
筆者は細川に何度かインタビューをしているが、彼はこのあたりに非常にこだわっている俳優だ。つまり、演じるキャラクターが目の前にしている世界に対して誠実なのである。こういった俳優たちによって、優れた作品はできているのだ。細川岳が示す俳優としてのスタンスを、多くの方に知ってもらい、受け止めてもらいたい。
参考
※ 公式ガイド『連続テレビ小説 舞いあがれ! Part1』(NHK出版)にて
■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK