岩永洋昭×行成とあが語り合う『ベルセルク』からの10年 新規カットに込めた思いとは?

強さと弱さを併せ持つガッツとキャスカ

――今回の放送に際し、新規のシーンもあるので新たに収録されたそうですが、コロナ禍でもお2人は一緒に収録できたのですか?

岩永:そうですね。2人一緒にやらせてもらいました。

――10年前のキャラクターに戻るのは大変ではありませんでしたか?

岩永:この10年、何度が演じる機会があったので、その点については難しくなかったです。ただ、ガッツが黒の剣士になる前は少し声色が高いので、そこは昔の作品をもう一度観直して調整しました。

行成:私も難しくはなかったです。多分、10年前の方が大変でした(笑)。あの頃はまだ新人で、右も左もわからない中、ぶつかっていくしかありませんでしたし……。今はキャスカとも長い付き合いになってきて、自分も10年間でいろいろ経験してきたので、演技の幅も広がり、「キャスカはこうでないといけない」という気持ちより、自分がどうしゃべってもキャスカになると思えるようになりました。

――キャスカは演じる上で、それなりに覚悟が必要な役に思えます。キャスカを演じることの大変さとはなんでしょうか?

行成:私は結構、キャスカに共感する部分が多かったと思います。キャスカは、「がんばらないと」って気持ちが強かったり、でも、実は弱い部分もあって、その弱さを出していいのか悩んでいる面もあったりと当時業界に入ったばかりの自分にリンクしていたと思います。10年前の自分は、強がっていて弱さを見せないようにしている姿に、特に共感していましたが、今は逆にふと見せる弱さの方にも、より共感が持てるようになりました。

――弱さ、という点では、ガッツは強い男のように見えて、実は弱さも持っているキャラクターと言えると思います。

岩永:確かに、ガッツは弱さも抱えているんだなと10年前から考えていました。強いことは強いんですけど、幼少期のトラウマゆえの弱さがあって、それを払拭するために常軌を逸した強さを求めているんだと思います。

誰もが持っている感情を包み隠さず描いているのが魅力

――そうしたキャラクターの複雑さが何重にも織り込まれている作品ですよね。

岩永:そうですね。観れば観るほど、自分が携われば携わるほどにそれを実感します。三浦先生は本当にすごい作品を生み出したんだってつくづく思います。先生とは一度、きちんとお話してみたかったです。本当にちょっとお会いしてご挨拶した程度でしたから。

行成:あんなに、にこやかな方がこんなダークな作品を描いたなんで想像できないですよね。

岩永:全く思えないですよね。ただ、グロいだけじゃない、その裏には人間的な部分が描かれている作品だと思います。

――お2人が考える、『ベルセルク』の魅力の本質はなんでしょうか?

岩永:この『黄金時代篇』に関しては、陽があってから陰に向かっていくので、だからこそ、陽の時間が貴重に見えるんですよね。陽と陰がはっきりと描かれている点が一番の魅力だと思います。

行成:ガッツとキャスカにとって、唯一の幸せだった時代ですよね。私はやっぱりこの作品は、人間くささが魅力だと思います。鷹の団にはガッツやグリフィスもいれば、コルカスみたいな皮肉屋で欲深い人も出てきます。1人ひとりの個性がきちんと見えるし、みんな背負っているものがあるんですよね。ガッツやキャスカだけじゃなく、ジュドーも悩みを抱えているし、口数少ないピピンにも考えていることがある。そうやって、いろんな人間にフォーカスされているところが好きです。

岩永:本当に、いい意味でやばい作品だと思います。

――そんな作品をテレビ放送できるのかなと思いませんでしたか?

岩永:当時も思いましたね。劇場版とはいえ、すごいとこまで描写してるなと。

行成:結構、いろんなものが吹っ飛んでますからね。

――そこまで見せないと描けない人間の業があるんだという説得力がありますね。改めて、テレビ放送で初めて本作を観る方もいると思います。どんな点に注目してほしいですか?

行成:今からまっさらな状態で『ベルセルク』に触れられるのは羨ましいです。私ももう一度まっさらな状態であの衝撃を味わいたいです。誰しもが持っている感情を、包み隠さず描いている作品なので、響くものは必ずあるのではないかなと思います。

岩永:どんな反応があるのか楽しみです。映画公開当時も、この作品を全く知らない方が、僕が出ているからということで観に行ってくれたら、すごく面白いと言ってくれて、以来、ずっと『ベルセルク』にハマッている人もいるんですよ。人間の欲深さとか業とか、そういうものをしっかりと受け止められる人なら、絶対面白いと思えるはずです。こういう貴重な作品に参加させてもらって、僕は本当に幸せ者です。

■放送情報
『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』
TOKYO MX:毎週土曜24:30〜放送
とちぎテレビ:毎週土曜24:30〜放送
群馬テレビ:毎週土曜24:30〜放送
BS11:毎週土曜24:30〜放送
アニマックス:毎週日曜23:00〜放送

原作:三浦建太郎
メモリアル・エディション監督:佐野雄太
劇場版監督:窪岡俊之
出演:岩永洋昭、櫻井孝宏、行成とあ、梶裕貴、寿美菜子、藤原貴弘、松本ヨシロウ、矢尾一樹、ケンドーコバヤシ
脚本/メモリアル・エディション脚本総監修:大河内一楼
キャラクターデザイン/総作画監督:恩田尚之
アニメーションディレクター:岩瀧智
美術監督:中村豪希、竹田悠介、新林希文
動画検査:梶谷睦子、加来由加里
色彩設計:成毛久美子
CGI監督:草木孝幸、廣田裕介、斉藤亜規子、今中千亜季
編集:重村建吾
音響デザイン:笠松広司
音楽:鷺巣詩郎
作画:恩田尚之
美術:中村豪希
色彩:成毛久美子
撮影:今中千亜季
オープニングテーマ:平沢進「Aria」(テスラカイト)
エンディングテーマ:中島美嘉「Wish」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
アニメーション制作:STUDIO4°C
©︎三浦建太郎・スタジオ我画/白泉社
©︎三浦建太郎(スタジオ我画)・白泉社/BERSERK FILM PARTNERS

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