『祈りのカルテ』が産婦人科ドラマに仕掛けた工夫 複数人の物語を描いたことで得た成果
そのためだろうか、後半はこれまでのエピソードと比較してもやや大きい視点で運ばれた印象だ。良太の同期であるみどり(池田エライザ)が気にかけている腎臓内科の患者・沙智(豊嶋花)が同年代の入院患者に恋心を抱き告白の特訓をするが、彼が他の女性といるところを見て“好きだから告白しない”という選択をする。それをきっかけに良太は文香の抱えている秘密に気が付くのだ(もっとも、それがあっても今回の“謎解き”はいささか性急な部分が目についたが)。また良太の実家が登場し、実母とその再婚相手に気を遣うあまり苦手な辛いカレーをあえて選択してしまう良太の姿にもまた、“相手を思うからこそ言えない”というテーマが重ねられていく。
そして沙智が手術を受けて退院したら告白すると決断し、目を背け続けていた手術に臨み歩き出すシーンが、文香の帝王切開と子宮頸がんの手術と重ねられる終盤。生きるため、生かすため、そしてその後生きる希望を見つけるための手術。医療ドラマの見せ場、あるいは物語を転換させる重要なファクターである手術が、よりドラマ性の高い効果を生むものとして機能したのは、一人の患者の物語だけに絞らなかったことの何よりの成果といえよう。
■放送情報
土曜ドラマ『祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:玉森裕太、池田エライザ、矢本悠馬、濱津隆之、堀未央奈、YU、松雪泰子、椎名桔平
原作:知念実希人『祈りのカルテ』シリーズ(角川文庫/KADOKAWA)
脚本:根本ノンジ
演出:狩山俊輔、池田千尋
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:藤森真実、戸倉亮爾(AX-ON)
音楽:サキタハヂメ
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/inorinokarte/
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