マーベル・スタジオ“初のホラー作品” 『ウェアウルフ・バイ・ナイト』にみる新たな可能性
ヒーローが活躍するイメージが強いマーベル・コミックだが、このように異なる文脈で楽しむことができる作品も数多く存在する。現在は、マーベル・スタジオがその部分を利用して、さらに製作するジャンルの間口を広げていこうという段階に入っているのだ。そうでもなければ、昔のホラー映画の要素を扱ったモノクロ作品などという企画が、潤沢な製作費をかけて成立するのは難しいはずだ。
ヒーロー映画のブームが到来して、多くの大物俳優が何かしらのヒーロー作品に出演しているといえる現在だが、じつはアメリカの映画人の側では、この状況をあまり快く思ってない者も存在する。ブームに苦言を呈するマーティン・スコセッシ監督やフランシス・フォード・コッポラ監督のように、もう映画界の流れに気を遣う必要のない映画人は、なかでもおおっぴらに声を挙げている。
だが本作や、DCコミックス原作のシリーズ『サンドマン』のようなアプローチの作品であれば、ヒーロー作品を嫌うクリエイターでも、手がけてみたいという人が少なくないのではないのだろうか。モノクロで過激さが緩和されてるとはいえ、本作で鮮血が飛び散るシーンは、フランシス・フォード・コッポラ監督の『ドラキュラ』(1992年)を思い出させるところもある。
もっというならば、このタイミングを利用して、逆になかなか通らないような企画が成立させられる状況が生まれているともいえよう。今後、マーベル・スタジオ作品では、このような特徴的な作品が増えていく可能性がある。
さらに、同様の雰囲気を共有する原作と連結することで、新たな「ユニバース」が生まれ、ヒーロー作品のファン以外にもリーチする、ダークな作品群のラインへと成長していく展開も考えられる。そこで大事なのは、本作のようなクリエイティブなチャレンジが継続されるかどうかといった点になるだろう。
■配信情報
『マーベル・スタジオ スペシャル・プレゼンテーション:ウェアウルフ・バイ・ナイト』
ディズニープラスにて独占配信中
©︎2022 Marvel
公式サイト:https://www.disneyplus.com/ja-jp/movies/werewolf-by-night/J1sCDfT3MaDl