高畑淳子、哀川翔、長濱ねる 『舞いあがれ!』舞の暮らしを見守る五島列島の人々

 NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』第1週で、舞(浅田芭路)の五島列島での新しい生活が始まった。五島編では祖母・祥子(高畑淳子)をはじめ、さまざまな登場人物たちが舞の暮らしを見守る。

舞を優しく見守る祖母・才津祥子(高畑淳子)

 言葉の少ない祥子に舞は何か怒っていると感じてしまったが、言動がそっけないだけでとてもあたたかな人物であることはすぐに分かる。舞を豪(哀川翔)やさくら(長濱ねる)に紹介したときに見せた笑顔は明るく、孫と会えたことへの嬉しさが感じられた。豪やさくらと話すときの祥子は朗らかで、親しみがあり、和やかな関係性が伝わってくる。「まだ一回も舞の気持ちば聞いたことがなか」という祥子に、舞が自分の気持ちを正直に答えると「よし、分かった」と心強い顔つきで笑った。舞の頑張りを認める、優しさに満ちた笑顔だった。

 高畑の演技は、舞と向き合う場面だけでなく、めぐみ(永作博美)と向き合う場面でも魅力的だ。高畑は表情一つで母と娘の間に残る微妙な距離感を表現している。電話でめぐみと話す背中には、長年顔を合わせていない娘へのわだかまりが感じられた。けれど、めぐみと向き合って話す祥子の口元は微かに微笑んでいた。祥子は、舞とめぐみの様子を黙って見守る。高畑の眼差しは、長年離れていためぐみへの指摘に気が引けている様にも、めぐみの母親として行動を理解して声をかけていないようにも見えた。

 祥子の佇まいは、自分の力で生きてきた説得力を感じる強さがあるが、思いやりにも溢れている。そんな祥子との暮らしは、舞の心を大きく変えていくことだろう。

めぐみの同級生・浦信吾(鈴木浩介)

 第3回で登場した信吾はめぐみの同級生だ。鈴木の表情豊かな演技が、さりげない気遣いを見せる信吾の優しい人物像を浮かび上がらせる。祥子の家へやってきた信吾はめぐみを見ると、ぽかーんと口を開けて驚くが、段々と顔がほころび、「ばえー! めぐちゃん。帰ってきたとかぁ!」と声をあげた。めぐみとの再会に心から喜んでいるさまが伝わってくる。感無量な様子で「めぐちゃん、五島ん帰ってこれてよかったなぁ!」「祥子さんもなぁ!」と2人に声をかける姿には、信吾の大らかさや気の良さが感じられた。信吾の明るさは祥子とめぐみの距離をぐっと縮める。

 めぐみを診療所へ送る信吾は、舞の体調を心配するめぐみを励ます。「うちん子たちと仲良うすればよかたい。なあ、一太」との声かけに、息子の一太(野原壱太)も「およ!」と元気よく返した。舞は一太とも彼の妹・凛(絢香)ともすでに打ち解けている。第5回でめぐみは舞を祥子に預け、東大阪へ帰ったが、信吾と彼の子どもたちの存在は心強かったことだろう。舞の成長を見守る人物として、今後どのような表情を見せてくれるのか楽しみだ。

地元の気のいいおじさん・木戸豪(哀川翔)

 哀川演じる豪は船大工で、祥子の亡き夫が操縦していた船を作った。初登場時、あまりにも自然に祥子の家の冷蔵庫を開ける姿に驚いた視聴者もいたはずだが、祥子が晴れやかに笑う姿もあいまって、豪と祥子の親しい間柄がうかがえる。哀川は今回初めての朝ドラ出演となるが、それを感じさせないほど「地元の気のいいおじさん」として馴染んでいる。祥子と豪の会話を覗き見ていた舞に驚く演技は茶目っ気たっぷりでコミカルだった。舞が五島で過ごす中で、豪のひょうきんな姿と船大工としての渋い姿を哀川は見せてくれるはずだ。

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