『六本木クラス』“土下座”の新たな解釈はお見事! 新×葵の愛に満ちた最終回

『六本木クラス』日本オリジナルのラスト

 竹内涼真が主演を務める木曜ドラマ『六本木クラス』(テレビ朝日系)が最終回を迎えた。

 1話完結のドラマが多い現在のテレビ朝日木曜ドラマ枠としては珍しい連続ドラマへの挑戦、全13話のロングラン放送。そして何よりも、2020年にNetflixで配信され日本でも大ブームを巻き起こした韓国ドラマ『梨泰院クラス』の原作漫画を翻案した日韓共同プロジェクトということが、本作の越えるべき大きなハードルだった。

 放送前のネットでの風当たりは強かったが、回を重ねるごとにその評判は好転していく。それは主演の竹内をはじめとするダブルヒロインの平手友梨奈、新木優子といったキャストの演技も大きくあるが、『梨泰院クラス』を下地にしながらも、日本の六本木を舞台とした『六本木クラス』という新たな作品として、独自の物語構成や価値観、アドリブ要素を多分に織り交ぜていったことが初めて作品に触れるライト層だけでなく、『梨泰院クラス』を完走してきたコア層までをも納得させた要素だったのではないだろうか。

 その筆頭と言えるのが、まだ「二代目みやべ」の店員だった綾瀬りく(さとうほなみ)が龍二(鈴鹿央士)にトランスジェンダーを公表されるシーン。さらにこの最終回でも『梨泰院クラス』とは別の答えを出したところがある。それが、茂(香川照之)が新(竹内涼真)を相手に土下座をしようとする場面だ。

 龍河(早乙女太一)に拉致されている葵(平手友梨奈)の居場所を聞き出すため、新はその代償として茂に土下座をする。16年に及ぶ復讐劇の最後の到着点が、互いにとっての土下座。だが葵への愛に気づいた新は、彼女の命に代えれば“これしきのこと“と、茂が拍子抜けしてしまうほどにあっさりと土下座をして見せる。自分の息子の拉致事件を利用してまでも新に対して屈辱を味わわせることに執着し続ける茂と張り合うことに、情けなくなってしまったのだ。

 長屋ホールディングスを後にした優香(新木優子)の会社に対する横領、贈賄のリークをきっかけにして長屋は地の底に。そんなどん底の長屋を買収しようとしたのが、新の「株式会社RC」だった。自分の命より大事な長屋を乗っ取られるという危機に、茂は新の待つみやべへ。軽々と土下座をしようとする茂に新は「今のあなたが土下座をしたところでなんの価値もありませんよ」「これはビジネスなんです、会長」と弱々しい彼の背中を強く叩く。セリフ自体そこまで変わってはいないが、茂に土下座をさせないこと、全てを失った彼の背中にエールとも捉えられる喝を入れることは『梨泰院クラス』から大きくアレンジされている。

 確かに土下座に固執していた新が、そのくだらないこだわりに気づき、茂の土下座を止めるという流れは筋が通っていながら、ビジネスマンとしても上だということを証明している。新たな解釈と言えよう。第8話で記者会見を開いた茂がマスコミに向けて土下座をしなかったことを考えると、最初からこのゴールは決まっていたとも考えられる。

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