『オリバーな犬』交錯する2つの事件を整理する 言葉への相反するスタンスが生むスリル
さて、冒頭のセリフは白昼堂々と飲酒しながらポールダンサーのミラ(佐久間由衣)に発情するオリバーが一平に発したものだが、第5話では有史以来続くコミュニケーションの疑問が提起された。チョウスケの「押忍」や神々𢌞の「レベル高い」は、自分が考えるそれと同じなのか。韓国語のお菓子を買う時、何の味か店員に聞くはず。自供した渡の「お前がそれを話すまでは、俺も嘘をつきとおす」を文字通りに受け取っていいのか。意味の隙間を縫うような軽妙な言葉遊びと、言葉への懐疑的ともいえる慎重なスタンスが今作のスリリングさを生んでいることは確かである。多義的な「え」や「絵」に込められたメッセージは、意味や言葉で捉えきれない感覚ややり取りそのものに目を向けさせるものだった。
無秩序さが得体の知れないエネルギーを放出していたシーズン1に対して、豊富なボキャブラリーに裏打ちされた感覚をたよりに、プロットを言外のコミュニケーションでつなぎ合わせたシーズン2。残り1話を惜しみつつ、パワーアップしたカオスを楽しみたい。
■放送情報
『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』
NHK総合にて、9月20日(火)、9月27日(火)、10月4日(火)22:00~22:45放送
再放送:9月27日(火)、10月4日(火)、11日(火)15:10~15:55放送
出演:池松壮亮、オダギリジョー、永瀬正敏、麻生久美子、本田翼、岡山天音、玉城ティナ、くっきー!(野性爆弾)、永山瑛太、川島鈴遥、佐藤緋美、浅川梨奈、染谷将太、仲野太賀、村上虹郎、佐久間由衣、寛一郎、千原せいじ(千原兄弟)、河本準一(次長課長)、高良健吾、坂井真紀、葛山信吾、火野正平、竹内都子、村上淳、嶋田久作、甲本雅裕、鈴木慶一、國村隼、細野晴臣、香椎由宇、渋川清彦、我修院達也、宇野祥平、松たか子、黒木華、浜辺美波、濱田マリ、シシド・カフカ、河合優実、佐藤玲、風吹ジュン、松田龍平、松田翔太、松重豊、柄本明、橋爪功、佐藤浩市
脚本・演出・編集:オダギリジョー
制作統括:柴田直之(NHK)、坂部康二(NHKエンタープライズ)、山本喜彦(MMJ)
音楽:森雅樹
主題歌:「The Hunter」(EGO-WRAPPIN’)
制作:NHKエンタープライズ
制作・著作:NHK、MMJ
写真提供=NHK