『監察医 朝顔』が帰ってくる 上野樹里が「まだまだ、朝顔を演じたい」と語る理由

 『監察医 朝顔』(フジテレビ系)が帰ってくる。

 法医学者×刑事、異色の父娘を描く同名漫画作品を原作に、第1シーズン、2クール連続での第2シーズンがフジテレビ月9枠で放送された『監察医 朝顔』シリーズ。主人公の法医学者・万木朝顔(上野樹里)が解剖で遺体の謎を解き明かし、見つけ出した“生きた証”で生きる人々の心まで救っていくさまを描きながら、東日本大震災で被災した母・万木里子(石田ひかり)を失った悲しみを抱え、父・万木平(時任三郎)、夫で刑事の桑原真也(風間俊介)、娘のつぐみ(加藤柚凪)ら家族とともに、少しずつ乗り越えていく姿を描いていくヒューマンドラマだ。

 9月26日に『監察医 朝顔2022スペシャル』が放送される。本作では第1シーズンより、東北各地で撮影を行っており、今回は陸前高田市で撮影が行われた。主演の上野樹里は1年半ぶりの再会となった朝顔の変化について「私たちと同じように生きていて、当時とはまた違う景色に直面している」という。久しぶりに訪れた陸前高田の街で感じたことや自身のキャリアのなかでも“代表作”といえる本作への思いについて話を聞いた。(編集部)

「陸前高田の“今”を伝えられる」

――第2シーズンから1年半後の物語ということで、その1年半を埋めるためにどんなことをされましたか?

上野樹里(以下、上野):その1年半の間に私たちもいろいろなお仕事をしていますけど、“生きている”ということに変わりはなくて、その上で変化は避けて通れないと思うんです。台本を読むときは、どうしても1年半前、あのときの髪型、あのときの雰囲気、というイメージで読んでいくけど、台本の中の朝顔もまた私たちと同じように生きていて、当時とはまた違う景色に直面している。現在進行形で「生きているな」と思ったので、今の自分で、今できる朝顔を今やればいいんじゃないかなと。“埋める”というよりは、今の自分で向き合える朝顔を演じられたらいいかなと思いました。セットも全部残っていて、解剖室や研究室だったり、万木家だったり……それによってまた『監察医 朝顔』の世界観に引き戻されていく。その中にキャストやスタッフが揃って撮影していくと、この感覚が懐かしいと感じました。収録日1日でクランクアップしてしまう人もいるので、その瞬間瞬間を楽しみながら、「また何年後かに会えたらいいな」と思いながら収録していました。なかなか会えない地元の友達に会うと“時”を感じないけど、『監察医 朝顔』のキャスト、スタッフはそれに近い領域にきている気がします。それはすごくありがたいですし、撮影期間は短いけれど、それを感じさせない空間でした。

――今回演じてみて、あらためて感じた『朝顔』の魅力について聞かせてください。

上野:特別にキャッチーな魅力があるわけではなくて、すごく普通なんだけど、普通なことが尊い。昭和の風景が残っていて、今回は牛乳瓶を木箱から出すところから始まって、「あ、牛乳取ってるんだ!」と思ったり(笑)、畳の上にあるちゃぶ台でご飯を食べていたり。あと、魅力のひとつは、陸前高田の“今”を伝えられること。ドラマを超えてドキュメンタリー要素もあると思っています。(東日本大震災から)10年経って、震災や被災地のことを考える機会が少なくなってきていると感じることがありますが、当時の記憶を今も抱えて生きている人がいるし、まだまだ支援も必要。そういった“今”を伝えられるというのは、すごくやりがいがあります。今回は戦没者遺骨のDNA鑑定の話も出てくるのですが「大切な人の“生きた証”が知りたい」という思いを抱えてる人がいるんだ、ということを軽やかなタッチで優しく温かく伝えられたらと思います。朝顔自身もすごく等身大なので、観ている方も朝顔と距離を感じずにご覧いただけるかな。朝顔がしっかり生きている姿を見せることで、共感したり、癒されたり、孤独を感じている方にはその悲しい気持ちを包み込んで背中を押してあげられるような、優しいドラマだと思います。

――久しぶりに訪れた陸前高田はいかがでしたか?

上野:一番変わったのは、お祭りをやっていたことです。私はコロナ禍の前にお祭りに行きたくて予約していたのに全部キャンセルして、そこからお祭りは中止に。今回、大船渡にも泊まったのですが、ホテルの目の前に花火が上がって、屋台もたくさん出ていて。前日からたくさんの観光客が同じホテルに泊まっていて、すっごく賑やかだったんです。前に来たときはホテルもスーパーも食事施設も私たちがメインの客だったのですが、今回はパーキングも満車、「何か地の魚や果物を食べたいな」と思ってスーパーに行ってもお刺身などはほとんど売り切れていて、みんな楽しみたいんだなと感じて。「残念」と思いながらも、活気が戻ってきていることが何より嬉しかったです。次の日の撮影で、七夕まつりの山車が通り過ぎるのを見て、その大きさや、何十人もの男性が一生懸命に声を出して太鼓を叩いている姿にもすごく感動しました。撮影ですけど、浴衣を着て参加できて楽しかったです。

――プライベートに近い感覚に浸れたと。

上野:本当に一瞬だったんですけどね。でも、その伝統的なお祭りをワンシーンでも映すことで、「私も行ってみたいな」と思ってくれる人が増えるといいなって思います。

関連記事