彼女が再び襲来! 『闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん』はファンを喜ばせる作品に
食べ方と見た目のギャップがありすぎる、あの女が帰ってきた! ファン待望、映画最終作から6年の時を経て、『闇金ウシジマくん』シリーズ最新作にして初のスピンオフ『闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん』がMBS/TBSドラマイズム枠にて放送開始された。
『闇金ウシジマくん』は、最も成功した漫画家実写作品のうちの一つだろう。漫画は全46巻にして完結済み。2010年から放送されたテレビドラマは2016年のシーズン3まで制作、映画版は2012年の第1作目から2016年秋にかけて計4作が制作された。回を増すごとにキャストも豪華に、内容も過激になっていったことで注目された本シリーズは、映画『闇金ウシジマくん Part3』の興行収入を例にとるとオープニング4日間で2億8391万円を記録、最終的に9億円という数字を叩き出し大ヒット作品となった。
大島優子、白石麻衣、最上もがなどのアイドル出身の女優から、林遣都、菅田将暉、窪田正孝、柳楽優弥、太賀、本郷奏多、山田裕貴、間宮祥太朗ら人気実力派俳優がゲスト出演。さらに、光石研、大杉漣に木南晴夏、門脇麦に岸井ゆきの、浜野謙太に前野朋哉、そしてバカリズムに大久保佳代子、藤森慎吾に児嶋一哉と、異彩の共演が重なるに重なって、訳がわからないくらい全方面から“いい”人たちが集結している。画面がかなり賑やかで、純粋に彼らの突き抜けた演技は見ているだけで楽しい。これも、本シリーズが人気を博した大きな要因だろう。
ただ、何よりもストーリーそのものと原作の映像再現から目が離せないこと、そしてキャラクターの魅力が本作の味噌だと言える。原作者・真鍋昌平が実在する闇金業者やその客に会い、取材を重ねたからこそのリアリティを持つ物語。だからこそ、いくら独特な擬音語であったり強靭な肉体のキャラが出てきたりとフィクションっぽく誇張されて描かれても、拭いきれない実話感が実録物的なスリルを与えてくれる。もともとがオムニバスのストーリーを、うまい形で全て繋がっていく見せ方も映像版の魅力の一つだった。軽い気持ちで観るのもためらわれるが、気になってしまう今日も日本のどこかで起きているであろう話。まるでアビスの底を覗き込むくらいダークな物語でも、登場人物それぞれがあまりにクズでも、「自分もこれくらいダメになる時があったりするよな……」なんて思えたりするほど、逆に欲に正直すぎる人間臭い等身大さがいい。そんなキャラクターを実力派俳優が怪演するのだから、見応えしかないのだ。
さて、そんな大人気シリーズの主役を飾るのは、映画『闇金ウシジマくん Part2』で初登場したウシジマくんをライバル視する存在、犀原茜だ。演じるのは映画版に引き続き、高橋メアリージュン。彼女の演じる犀原が、もう最高にカッコよくて狂っている。もともと原作では男性のキャラを、このように映像化にあたって大胆にも女性キャラに変更したのは英断だった。いつもオーバーサイズの白シャツに黒いスラックス、腕には大事な人の形見のネクタイが巻き付けられている。そんな犀原は、もはや高橋にしか演じられない、彼女だけの役柄と言っても過言ではないのだ。
映画『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』の過去エピソードでも明かされた通り、犀原はウシジマに比べてかなり表面的に凶暴である。見た目はかなりの美人でも、軽く声をかけたり、ましては無理やりキスをしてしまったりすれば最後、唇を丸ごと刃物で削ぎ落とされるレベルで落とし前をつけなければならない。彼女は闇金融ライノー・ローンの経営者として、同業者の丑嶋を目の敵にしており、ケツモチの若琥会で経理を牛耳っていたヤクザの熊倉(光石研)の言いなりでもあった。スピンオフドラマ『闇金サイハラさん』は、まさにそんなヤクザ都合で苦労する犀原の一面も描かれるようだ。
側近の村井(マキタスポーツ)はもちろん、あの熊倉も映画版から再登場し、早速第1話に顔を見せている。村井といえば、映画『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』では犀原のために、身体をハリに張って瀕死状態になっていた。片目を潰され、全身に酷いタバコ痕をつけられた悲惨な姿が昨日のことのように瞼の裏に浮かぶが、スピンオフドラマに登場した彼はピンピンしていて、そういった傷を負っていない様子。そこから考えて、おそらく本作は映画第2作目の後、第4作目の前くらいの時系列に位置しているのではないかと考えられる。債務者の加茂(藤森慎吾)に火をつけた犀原が「動画とって」と言う前から携帯を出して撮影を始めているという敏腕部下っぷりが眩しい村井。彼と犀原のローな掛け合いも本スピンオフの魅力になっていくだろう。