『魔法のリノベ』こだわりの見せ方はどう実現した? 岡光寛子プロデューサーに聞く裏側

 波瑠が主演を務める月10ドラマ『魔法のリノベ』の最終話が、9月19日22時よりカンテレ・フジテレビ系にて放送される。大手リフォーム会社で営業成績抜群のエースの立場にありながら、ワケあって男だらけの福山家が営む「まるふく工務店」に転職してきた主人公・真行寺小梅(波瑠)と、工務店の長男で、営業成績0点のバツ2シングルファザー・福山玄之介(間宮祥太朗)がバディを組み、住宅リノベ提案という“魔法”で、依頼人すら気づいていない悩みや問題をスカッと解決していく模様を描いた本作。最終話の放送を前に、カンテレの岡光寛子プロデューサーにインタビュー。小梅役の波瑠、玄之介役の間宮祥太朗らの現場でのエピソードや、制作にまつわる裏話を語ってもらった。

「まるふくの空気=現場の空気」

――波瑠さん演じる小梅、そして間宮祥太朗さん演じる玄之介の印象を教えてください。

岡光寛子(以下、岡光):瑠東監督といつも話しているのは、役者さん自身が持っている人間性をキャラクターに反映できたら、ということです。小梅と玄之介はまさにその通り。視聴者からも2人がうまくいってほしいと言ってもらえますし、第9話が終わった段階で何とか幸せにしてほしいというお声をいただくくらい。うまくキャラクターと2人の持つ人間性のようなものがマッチして愛される存在になっていると思います。本当にこのお二方は波長が合うというか、お互いをリスペクトし合っていて。それでいていつも自然体でいてくださるので、安心感がありますし、役を通じてどんどんバディ感が強くなっていくのを、プロデュ―サーとして嬉しく見させていただいております。小梅というキャラクターは一見すると気が強くなりがちなのですが、それをチャーミングにしてくれているのは波瑠さんの芝居の塩梅だと思っています。そして玄之介の憎めなさと素直で優しいところも、間宮さん自身が本来持っていらっしゃる部分です。少し抜けている情けないところや、甘い部分を見せるように小梅に対して目線を合わせている姿などからは、間宮さんの新しい部分も見えているような気がしています。改めてこの2人でよかったと思えるような時間になりました。

――梅玄コンビの難しさは、お仕事ドラマとして恋愛に傾きすぎない温度感を維持しつつも、2人が想い合っていることは理解できる、というバランスの部分なのではと感じました。その辺りの見せ方で工夫されたことや、考えた部分はありましたか?

岡光:あくまでお仕事ドラマが大前提なので、絶対に恋愛要素を入れなきゃとは思っていませんし、ラブを入れるのは反対という意見があるのも分かっています。ですが、そこは切り離したものではなく、彼らの仕事や生活の延長線上に、人を思う気持ちがあるというだけのことではないでしょうか。第8話のラストの「始めてみましょうか」の台詞が全てを物語っていると思います。相手に対して好きとか付き合うということ=告白ではないと思っていて。人としての尊敬や信頼、思いというものが、その人自身の人生を明るくして、日常に彩りを加えてくれる。そういう意味合いで2人の同志としての間柄の尊さを丁寧に描くことのバランスをすごく大事にしました。そこは監督と波瑠さんと間宮さんとの4人で梅玄コンビについても話し合いを重ねてきましたね。

――ありがとうございます。本作は登場人物が多く、とくにまるふく工務店のシーンでは、いつもワイワイとした雰囲気がありますね。現場では意図してそれを作りあげていったのでしょうか?

岡光:まるふくの空気=現場の空気だと思っています。まるふく工務店には若いキャストからベテランのキャストまでいます。その人たちがのびのびと自由にやれる空気感を波瑠さんと監督が作り出してくれていたのが大きいですね。吉野(北人)さんのように芝居の経験が少ない方から、エンケン(遠藤憲一)さんや近藤(芳正)さんのようなベテランまで、あそこに入ってしまえばみんなが対等で平等で、作品を良くするために、のびのびとやれる。上田誠さんが書かれたセリフやリズムをみんなが面白がってくれていて、台本を読んでいろいろと持ち寄ってきたものを、あそこで出し合っています。何を用意しているかは互いにわからない中で、1回やってみて初めてグルーブ感のようなものが生まれ、「こういうことをやってもいいんだ」という自由な空気からまるふく工務店の空気感が生まれていく。おかげでそれぞれの役がちゃんと生きて、「こんな工務店があったらいいな」という空間が生まれていると思います。

――私は個人的にまるふくろうが大好きなのですが、「ホーホー」や「リノベは魔法」などの台詞にはポーズがありますよね。そういう、脚本の文字や原作の絵だけでは表現できない部分を役者さんが演じる時には、監督やキャスト陣など発案者になるような方がいたのでしょうか?

岡光:誰がというよりは、この現場には面白いと思ったものをみんなが自由に発言できる空気があるんですよ。だからボツでもいいから、とりあえずやってみる。やりすぎて駄目なら監督から声がかかりますし。例えば1話で近藤さんが「リノベは魔法、まるふく工務店です」と人差し指を立てるジェスチャーを入れながら電話に出ますが、あそこは台本上では台詞しか書かれていませんでした。あのしぐさは近藤さんがやってくださったのがきっかけなんです。近藤さんがやっているのを見た波瑠さんが同じポーズをして、そのうちみんながやって……みたいな感じです。「ホーホー」も、小出&越後から生まれた仕草を皆がやりだしました。屋台での小梅の「アビリティ:詫び」ポーズは波瑠さんが、2話の玄之介の土下座や、そこから派生した3話の土下寝は間宮さん発信のもの。監督が、こうやってくださいと言っているわけではないので、生っぽい現場だなと思います。

――公式Twitterでも拝見しましたが、ビルに小梅たちが映るモノローグのシーンは「心の声の街」が非常に印象的な演出でした。しかも街が途中から栄えていっていますよね。あえてあのような演出をドラマに取り入れた意図はありますか?

岡光:まさに、第1話では閑散としていた街が第10話では出来上がってきています。台詞で話すことと心の声には大きな差があるし、それは言ってみれば精神世界のようなものなので、監督とどう表現しようかとなりました。いろいろチャレンジする中で、実直なお仕事ドラマの中にも「遊び心」とか「からくり」「ユーモア」を入れたいねという話の中から、ミニチュアやファンタジーを取り入れてみたり。ミシェル・ゴンドリーという海外の映画監督・映像作家がいるのですが、『魔法のリノベ』も同じように一貫して視覚的に楽しめる要素や引っかかる要素をたくさん入れていきたいと思い、心の声の世界が生まれました。そこでは普段の台詞とは逆のことを言っていたりするので、役者さんも思い切って振りを付けたり表情豊かにやってくださっている。それはそれでこのドラマの一つの色になっているのかなと思っています。

関連記事