『石子と羽男』を色付けた有村架純×中村倫也とのセッション 新井順子Pに聞く、裏設定も
塚原あゆ子&山本剛義、両監督のベスト回は?
――新井さんが思う、塚原あゆ子監督演出のベスト回はどのシーンでしょう?
新井:第4話の演出は効果的だなと思いました。目が見えない人が証拠になる映像を探して、実際に法廷で流れたドライブレコーダーの映像も音がなくて本人だけ見れないから、石子が手を握って言葉で伝える。そこに「主題歌のこのフレーズを絶対に当てたいんだ!」と言って、何回も編集していました。キャストのみんなも、台本を読んだ印象と現場でお芝居した印象、完パケを観た印象が全く違っていたようで、「まさかあの裁判があんなに感動するとは思わなかった」と言われました。防犯カメラと眼鏡をリンクさせて撮ったりしているんですけど、演出で印象が変わった回が第4話だったと思います。めるる(生見愛瑠)さんにも何度も何度も粘って芝居をやってもらって、「髪をボサボサに!」とか「メイクしないで! アイラインとって!」と監督が言ったら、「いや、アイライン引いてません!」みたいな(笑)。めるるさんと趣里さんの姉妹はすごくよかったなと思います。
――山本剛義監督の演出回はいかがですか?
新井:山本監督はファスト映画を扱った第3話の反響がすごかったですね。あの回は打ち合わせをする中で、最後に遼平(井之脇海)を許すかどうかという話になったんです。許すパターンもあったんですよね。でもこれは許しちゃいけないんだという山本さんの強い監督としての想いがあり、ああいうシーンになりました。脚本の西田(征史)さんも監督をやっているし、早回しで観られると余韻が薄れてしまうのは寂しいなというみんなの想いが詰まった回でしたね。ファスト映画を知らなかった方にも知っていただけて、CODA(コンテンツ海外流通促進機構)から感謝状を頂いたりと、多くの反響がありました。
――最後の許さなかったという決断、結構反響があったのを感じました。
新井:許していたら「そんな馬鹿な」ってなっていたんでしょうね。
――脚本の西田征史さんの脚本の魅力を教えてください。
新井:西田さんはコミカルなパートの脚本が本当に面白いです。いつも「ここで面白い会話をしてください」と指定して書いてもらうんですけど、毎回よく思いつくなと。ざっと「こういうネタやりましょう」というのは私から提案しているんですけど、それをうまく変化させて、台詞に想いを乗せて書いてもらっています。緩急が上手くつけられていて、中村さんと有村さんの穏便な雰囲気と合っているのを感じます。
――今回、西田さんとのタッグは初めてでしたが、お願いしようと思った決め手はあったんですか?
新井:西田さんとやったことがあった塚原が、コミカルなのはすごくうまいと思うよと教えてくれて。サスペンスが得意かどうかは分からなかったんですけど、そこは我々が結構やっていたので、ある程度下地を作っていけば、一緒にやれるんじゃないかと思いました。
現場は大爆笑だった有村架純のアドリブ
――新井プロデューサーといえば、毎作ラブシーンへのこだわりが詰まっている印象があるのですが、今回はどのようなこだわりが込められていますか?
新井:皆さんご存知かもしれませんが、相合傘もおんぶも私が作ろうって言いました(笑)。「ベタやな~」と思いながら(笑)。でも、走ったらすれ違って追いかけてくるみたいな、面白く相合傘になるというふうにして、ちょっと変形させて。クランクインしてすぐのシーンだったので、相合傘にすごく距離があったんです。ちょっと近づいてもらって、赤楚さんにOKテイクを見せて、言い回しのニュアンスを話しましたね。おんぶのときはおまかせでした。
――相合傘のときに大庭さんの肩が濡れているというのもキュンポイントで、SNSで話題になっていました。
新井:そこはこだわりというか、勝手に濡れるんです、ああいうのは(笑)。ほぼ濡れているというのがちょうどいいんじゃないですかね。去り際に大庭が「股にティーでマタニティーです」って言って、石子が「はい、わかりました」って言っているのはアドリブなんですよ。現場大爆笑で、使われてるかな~って思っていたら使われていました(笑)。
――2人の関係性が伝わるアドリブですね(笑)。
新井:お姉さんが聞き流すみたいな(笑)。
小中高生にも現代の日本を知ってほしい
――毎回の冒頭シーンの劇のこだわりを教えてください。
新井:第1話は普通の服を着ているんですけど、だんだん衣裳がコスプレ化してましたよね。制作部さんが、あのシーンのロケ場所を探すのが1番大変って言っていました(笑)。監督の場所のこだわりが強くて、さらにワンカット引きで見せるのに照明が1時間くらいかかっているんです。撮影は10分で終わっちゃって、放送も1分もないのですが……。コスプレはみんな楽しく、和気あいあいとやっていますね。
――制作段階から入れる予定だったんですか?
新井:あるあるですけど、第1話って人物紹介とか出会いとかあってなかなか本題に入らないんです。第1話は、石子と羽男が出会ってからなんやかんやあって、最初の5~6分は大庭さんが依頼に来ないのでどうしたものか…と。最初からリーガルものですよとか、こんなことで訴えられるんだということを上手く見せられないかなということで、ワンシーン入れてみようとなりました。舞台風にしたいという塚原監督のこだわりがあって、どんどん凝ったものになっていきました(笑)。
――改めて、この作品のテーマや視聴者にこういうことが伝わればという新井さんの想いを教えてください。
新井:法律ってすごく難しくて、弁護士さんに相談するのはとんでもないという日本人の奥ゆかしさがあると思うんですけど、ニュースを見ていると「なんでそれを誰かに相談しなかったんだろう」ということが多いなと感じていました。知人に話せなくても第三者のちょっと離れた人には話せることってありますよね。ご近所の町弁さんに簡単に電話で相談できますし、無料相談も結構あるので、何かに悩んだときは気軽に相談できるところがあればいいなと思いました。そして軽犯罪を犯してしまっている人って、意外と多いのかなと。「お店で充電していいですか?」って聞かなきゃいけないのに、コンセントを見つけたら無許可で充電してしまう。スマホが手放せない現代ならではの問題です。小中高生にも現代の日本を知ってほしいとわかりやすく作ろうと気をつけました。ニュースだったら難しくて見ないけど、ドラマだったら観る、みたいなことがあると思うので。でもニュースから引っ張ってきて、作っている当時は話題になっていなかった問題が大きくなって、狙ってやっている感じになってしまいました。ただやっぱり、今問題になっていることをチョイスすると、自然とニュースに出てくるというか。不動産投資詐欺とか、これを機にとどまってくれる人がいればそれでいいかなと思います。
■放送情報
金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:有村架純、中村倫也、赤楚衛二、おいでやす小田、さだまさし
脚本:西田征史
演出:塚原あゆ子、山本剛義
プロデュース:新井順子
編成:中西真央、松岡洋太
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/ishikotohaneo_tbs/
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公式Instagram:@ishiko.to.haneo_tbs