『石子と羽男』を色付けた有村架純×中村倫也とのセッション 新井順子Pに聞く、裏設定も

 2022年の夏の始まりと共にスタートしたTBS金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』も9月16日にとうとう最終話を迎える。

 パラリーガル・石子(有村架純)と弁護士・羽男(中村倫也)の“石羽コンビ”が、小さな事案から大きな事案まで、あらゆる依頼者に寄り添い、解決に導いてきた。そして第9話では、放火容疑で逮捕されていた大庭(赤楚衛二)を救出。残す1話で、まだ解決していない「不動産投資詐欺」「殺人罪」の最終決戦に向かう。

 「カフェで充電していたら訴えられた!」など、題材となる事案のちょっと捻られたユニークさや、石子と羽男をはじめとする愛らしいキャラクターたちの関係性など、多彩な魅力が詰め込まれたリーガルドラマ『石子と羽男』。最終回の放送を目前に新井順子プロデューサーにインタビューを行い、皆で作り上げていったというキャラクターから、現場で目の当たりにした俳優たちの姿、監督の演出のこだわりなど、全話を通して振り返ってもらった。

羽男と大庭の“超”裏設定

――新井Pの前作『最愛』(TBS系)ではキャラクターの名前を姓名判断していたと伺いましたが、石子と羽男の名前に関するこだわりもあれば教えていただきたいです。

新井順子(以下、新井):今回も全員姓名判断しました。石田硝子はすぐ決まったんですが、羽根岡佳男は最初は「羽村」とかいろんな案があって、最終的に落ち着きました。「石子」と呼ばせたいのがはじめにあって、コンビ相手もそういう感じで呼ばせようと思って、頭文字と最後の文字が「羽」と「男」で終わる名前で考えました。

――先に「石子」が決まって、そのあとにフルネームが決まったんですね。

新井:そうです。「石子」と言われている子の話にしようと最初に考えていました。私の身近に、「石子」と呼ばれている人がいたんです。本人には呼ばないんだけど、響きが好きで「石子~!」ってみんなで言っていて。

――今もご本人はわかっていないんですか?(笑)

新井:知らないと思います(笑)。今回の石子はみんな呼んじゃっていますけどね(笑)。

――『石子と羽男』は1話完結だからこそキャラ設定が大事とおっしゃっていましたが、本編では明らかにされていない登場人物の裏設定はありますか?

新井:石子は結構出ていますが、意外と知られていないのが、実は羽男は海外の大学に留学して中退しているという経歴があるんですけど、英語を話すシーンが全くなくて。あと、大庭が今まで付き合った彼女の数は3人というのが、超裏設定であります。どれだけ恋愛に疎いかという裏付けとしてあるんですが、活かせていません(笑)。

――意外と交際経験はそれなりにあるんですね。

新井:見た感じモテそうだけど不器用で、全部向こうからフラれていたり(笑)。羽男はアメリカに10年くらい住んでいたときに外国人の彼女がいたという過去もあって、中村さん本人から「いつ出るの?」って聞かれたことがあって。もう出ませんね……(笑)。塩崎(おいでやす小田)が元貴金属メーカーのサラリーマンだったという裏設定は全く出せていないですけど、実は会社勤めをしていたときがありました。

『99.9』『リーガル・ハイ』とどう差をつけるか

――キャストさんの表情がコロコロ変わるのが楽しいところですが、ベストな表情を引き出せたなというシーンがあれば教えていただきたいです。

新井:石子と羽男は、真面目なお芝居とコミカルなお芝居と、緩急がありますよね。お2人はいつも面白く現場でアドリブやアイデアをいっぱい出してくれます。第6話で、羽男が「顧問弁護士とれるかも」(ニヤニヤ)と言うのに対して、今までの石子だったら「いけません! そんなこと考えては!」って感じだったんですけど、第6話の石子は「ですね~」(ニヤニヤ)となっていて。台本にはニヤニヤしている石子というイメージはなかったんですけど、第6話後半くらいからは2人の空気感から生み出されているものがすごく多いです。キャラクターをどう変化させていくかは、準備稿が上がったら2人に意見を聞くんですが、本人たちも関係性をどう変えていくかということをしっかり考えていて。セッションして決定稿に反映させているので、本人からアイデアをもらって作っていったシーンもあります。毎度、あの2人のお芝居には驚かされますし、第9話では大庭が逮捕されたシーンがとてもシリアスで、「あ、中村倫也ってこういうシリアスもいい!」と思いました(笑)。大庭が釈放されて石子と羽男が涙をこらえるシーンには泣かされましたし、普段おちゃらけているイメージが強い分、そういう真面目な芝居が来るとドキッとします。

――赤楚衛二さんはどうでしょう?

新井:赤楚さんは第4話で、就職の面接に向かうときに「行ってらっしゃい!」と言われた時の顔がすごくいい表情をしているなと。子犬系、新入社員感を抜くにはどうしたらいいかと考えていたのですが、自然と抜けていった気がします。告白のシーンでは、「どんな芝居するんだ?」と思ってリハーサルを睨んでいたんですが、すごくいい表情でしたね。

――第9話では大庭が逮捕されて、これまでとは違った回だったと思います。

新井:第2~6話まではラブを推して大庭を描いてきたんですけど、第7話以降からはラブじゃないところの彼の成長を描いていて。もし身近な人が犯罪に巻き込まれたら、殺人犯になってしまったら、彼をどこまで信頼して弁護できるかというのはやりたかったので、キャスティングの段階から、逮捕されますという話はしていました。ここ1年の大庭はてんやわんやの人生なんですけど、いろいろなことに巻き込まれる人って多いじゃないですか。ついてない人ってとことんついてないよね、なぜそうなってしまうのだろうみたいなことを第9話、第10話でやっているので、ラブだけじゃない大庭が見れるかと思います。

――表情を抜くシーンが印象的なのですが、意識して撮影されているのでしょうか?

新井:心情のシーンはゆっくり撮っていますが、コミカルな部分はテンポよく撮っています。「それをやっちゃうと『リーガル・ハイ』だよね~」とか、カットをバンバン切ると「『99.9』になっちゃう」とか、『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)と『99.9-刑事専門弁護士-』(TBS系)という人気作品と、どう差をつけるかというところで試行錯誤はありました。違うのは、扱う案件が小さいというのはありますが、裏を返せばいろんな深い話があって、明日は自分がそうなるかもしれないという危険性があるものが多いので、そんなことあるんだと視聴者の皆様に身近に感じてもらえるようなところは、今までとは違うリーガル作品になったかなと思っています。

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