『初恋の悪魔』で反復される“カラオケ”と“手紙” 鹿浜たちが考察する第3の殺人

 坂元裕二脚本の『初恋の悪魔』(日本テレビ系)は4人の警察関係者が活躍する刑事ドラマだ。第7話では、これまで描かれてきた「カラオケ」や「手紙」といったモチーフが反復されながら、意味が変化していく様子が印象的だった。

 小説家の森園真澄(安田顕)が弁護士時代にホームレスの矢澤栄太郎(三島ゆたか)の国選弁護を担当した5年前に起きた男子中学生刺殺事件と、摘木星砂(松岡茉優)の恩人である淡野リサ(満島ひかり)が犯人として逮捕された3年前に起きた男子高校生刺殺事件は、どちらも冤罪で「同一人物による犯行でないか」と、鹿浜鈴之介(林遣都)たちが考察する中、第3の殺人が起こる。

 今回の被害者は男子大学生の望月蓮(萩原竜之介)。刃物による無数の刺し傷と靴を脱がされているという遺体の状態は、過去に起きた二つの事件と共通しているため、同じ人物による犯行ではないかと森園は断定する。しかし、望月の恋人の大学生・桐生菜々美(あかせあかり)が容疑者として浮上する。

 犯行が行われた時間に桐生が一人カラオケをしていたというアリバイを調べるため、鹿浜たちは第8回自宅捜査会議を行う。久しぶりの自宅捜査会議だが、これまでと違い馬淵悠日(仲野太賀)は、署長の雪松鳴人(伊藤英明)を殴ったことで警察職員を懲戒解雇となり、摘木星砂は別の人格と入れ替わっていた。

 アリバイを検証するため、カラオケボックスの模型を作り部屋番号と客の位置関係を確認する4人。彼女と同じテニスサークルに在籍している大学生5人は同じ時間にカラオケボックスを訪れていたが、大学生も店員も桐生をみていないと語る。しかし鹿浜たちは、大学生5人が女子高生5人と同席し、未成年にお酒を飲ませていたこと。それを店が黙認していたことに気づく。飲酒を隠すため、桐生のアリバイを集団でもみ消そうとしていたのだ。

 第7話にはカラオケで歌う場面が多く登場する。第5話では、YUIの「CHE.R.RY」を鹿浜たち4人が歌うことで心が通じ合う姿が描かれたが、坂元裕二作品には、カラオケを歌うシーンが頻繁に登場する。そこで強調されるのは「誰といっしょに歌うか」という人と人の繋がりだ。

 それが感動的に描かれれば、第5話のようになるのだが、今回は歌うことによってつながる姿がグロテスクなものとして描かれていた。大学生の5人がGReeeeNの「キセキ」を歌う場面や、女子高校生5人は動画撮影しながら歌うFRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」が暴力的に見えるのは、みんなで歌うことによって生まれる同調圧力が映像に滲み出ているからだろう。

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