『石子と羽男』の核となる“些細なこと”の大切さ 赤楚衛二演じる大庭に不穏な予感も
つながりができたからには……
そう、誰よりも石子は痛感しているのだ、若いうちに受けた傷は、その後の未来をより大きく左右するのを。それゆえに今回助けを求めてきた川瀬ひな(片岡凜)と東美冬(小林星蘭)を放っておくことができなかった。本人にはどうしようもない“何か”との遭遇で、望まない環境に身を置くことになったのかもしれない。
だとすれば、自分と羽男との遭遇が彼女たちの人生を好転させる分岐点になれないだろうか。一度つながりができた大人として、その責任を果たさなければならないという使命感にかられる。もしかしたら無意識に、彼女たちを救うことで、自分を救い直そうとしているのかもしれない。それほどに珍しく感情的に事件と向き合う石子がいた。
それは、振り返ってみると綿郎の言う「困っている人の傘になろう」そのままのスタンスにも思える。そして同時に、タイトルバックに傘を持って立つ石子と羽男の姿を思い出す。事務所の経営難に、自己プロデュースに、と翻弄されていた2人も、この潮法律事務所にやってきたときから、傘を差し出す側の人生へと歩むことになっていたのかもしれない。それは、第1話では依頼人だった大庭(赤楚衛二)も、綿郎とジム仲間のそば店員・塩崎(おいでやす小田)も同様だ。ひなと美冬の味方になろうと一肌脱ぐ。
なかでも夜を徹してパソコン作業に勤しんだ大庭の寝顔を、爽やかに差し込む朝日のなか見つめる石子の愛しそうな表情が印象的だった。まだ100%ではないかもしれないけれど、また石子の恋心が温度を上げていくのがわかる。「お付き合いをする」という特別なつながりを、今まさに大切に育んでいるのだ。
良いつながりとは、相手を想うということ。その温かなものに触れたとき、人は外れた道を引き返す勇気も湧いてくる。一見、行き場のない少女たちを救済するかのように近づき、売春を斡旋するKのような大人もいる。一方で、利益を省みずトラブルを一緒に乗り越えようとする“チーム潮法律事務所”のような大人もいる。そのなかで、誰に助けを求めるかが大事になってくる。
今回は羽男の名刺を拾ったことから、彼女たちの未来は大きく動いたが、羽男が「期待しない」とアンニュイな表情を浮かべるように、その先に待つ様々な些細なことで、また辛い境遇に逆戻りしてしまうことだってある。それでも「つながりができたからには」と全力で味方になってくれた大人がいてくれたという実感は、きっと消えないはずだ。
大庭に良からぬつながりの予感!?
難しいのは、どうしようもない何かと遭遇するときは、自分ではなかなか気づけないということ。たとえ、傍から見ればすぐにでも「ピー!」と警笛を鳴らしたくなる状況でも「推定無罪の原則」ではないが、“そんな悪い人ではないだろう”と信じようとしてしまうことがある。特に人のいい大庭のようなタイプは……。
第1話でパワハラのあった会社を辞め、潮法律事務所のアルバイトを経て、晴れて転職することができた大庭。だが、その転職先の雲行きが怪しい。高級ホテルに集まった会社経営者とその社員たち。その中心にいるのは謎の男・御子神(田中哲司)だ。「ぜひ今日は横のつながりを作ってもらって、ついでに日本の未来も作っちゃいましょう!」「成功する方法なんて簡単なんですよ。成功するまでやめなければいい。ふふっなんてね!」とは、“いかにも”な雰囲気。
さらには、つい先日入社したばかりなはずなのに、なぜか聞いたこともない会社+代表取締役の肩書きがついた大庭の名刺が用意されている。これは何か不穏な予感がするが、次回予告映像ではその続きと思われる描写はない。ということは、水面下でもっと強固なつながりができてからトラブルが発覚するのではと、背中がヒヤリとする。もし大庭がまたもやどうしようもない“何か”と遭遇してしまっているのだとしても、潮法律事務所で育まれた温かなつながりをもって解決されることを願ってやまない。
■放送情報
金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:有村架純、中村倫也、赤楚衛二、おいでやす小田、さだまさし
脚本:西田征史
演出:塚原あゆ子、山本剛義
プロデュース:新井順子
編成:中西真央、松岡洋太
音楽:得田真裕
主題歌:「人間ごっこ」RADWIMPS(Muzinto Records / EMI)
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/ishikotohaneo_tbs/
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