『新・信長公記』“自分の利となる器”を求める濱田岳 永瀬廉の真の団結が勝利なるか

 他人を信じるのって、ちょっぴり勇気がいる。もし、裏切られてしまったらどうしよう。それで恥ずかしい思いをするくらいなら、最初から信じない方がいいのかもしれない。過去に傷ついた経験がある人は、より臆病になってしまうはずだ。

 『新・信長公記〜クラスメイトは戦国武将〜』(読売テレビ・日本テレビ系)第5話でスポットが当たった黒田官兵衛(濱田岳)も、同じような葛藤を抱えていた。

 特進クラスのなかに潜んでいる裏切り者を暴くために、自ら悪役となった黒田。わざと、教室の黒板に「裏切り者は黒田」という貼り紙をして、徳川家康(小澤征悦)に寝返った武将たちを誘き寄せる。すると、意外にもあっさり、井伊直政(駿河太郎)、今川義元(松大航也)、真田幸村(田野倉雄太)、竹中重治(柳俊太郎)が裏切り者であると判明した。

 黒田が、ここまで身を削ってPBB作戦(=特進クラス内で戦を繰り広げることで、ポイントを倍に増やす作戦の名称)を遂行させようとする理由は、織田信長(永瀬廉)とみやび(山田杏奈)の存在にあると思う。2人は、どんな時でも黒田を信じていた。彼がいくら、「いつ、誰が裏切るか分からんのだぞ! 俺だってだ!」と臆病がゆえのジャブを打っても、「信じると決めたものは、信じたいのです」とほしい言葉をくれる。

 きっと、黒田はずっと“孤独”を感じてきたのだろう。キレ者で、周囲から一目置かれているけど、心の底から信用してくれる人はいない。孤高の天才のように見せているのも、寂しさの裏返しだったりするのかもしれない。決して、仲間が欲しいわけではない。自ら望んで一人になっているのだ、と自分に言い聞かせながら。

 思えば、彼はいつも、“自分の利となる器”を探していた。その理由を、「自分はトップの器ではないから」と明かしていたが、おそらく全身全霊をかけて信じ抜けるメンターを求めていたのだろう。でも、人を信じる方法が分からない。迷う黒田に、家康は「(人を信用できない)お前は正しい。人を頼るってことは、そいつが弱いからだ。信じる奴がバカなのさ」と声を掛ける。明智光秀(萩原利久)を仲間に引き入れた時と同じやり口だ。全力で相手を“肯定”して、「俺なら、お前の良き理解者になれる」とすり寄る。

 だが、人一倍臆病だからこそ、用心深く信長と家康の動向を探ってきた黒田には、“本当にトップになるべき器”が分かっていた。信じることは、弱さではなく強さ。誰だって、旗印戦中は、クラスメイトのことを疑ってしまう。けれど信長は、彼らの行動の裏にある“心の内”を繊細に読み解くことができる。井伊が家康派に寝返った理由も、仲間を守ってあげるための保険だとズバリ当てた。

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