一生続く? 沢口靖子主演『科捜研の女』から読み解く、長寿シリーズのすごさ

 1999年にスタートした沢口靖子主演のテレビ朝日系ドラマ『科捜研の女』の新シリーズが10月から放送枠を変え放送されることが発表され、「待ってました!」の声や「沢口靖子が生きてる間ずっとやってほしい」などの歓迎の声に溢れている。

 『科捜研の女』は、テレビ朝日と東映が制作し、テレビ朝日系「木曜ミステリー」枠で、1999年10月21日にSeason1がスタート。現在、Season21までが放送され、現行の連続ドラマ最長シリーズとして今もなお記録を更新し続けている。

 沢口にとっての代表作であることは間違いない『科捜研の女』シリーズのように、これまで主演俳優ありきで続いてきた長寿シリーズのすごさを検証したい。

 テレビ朝日・東映制作のドラマは伝統的に長寿作品が多い。かつて『遠山の金さん』などの時代劇や、『仮面ライダー』などのスーパー戦隊シリーズ、『土曜ワイド劇場』などのサスペンスなど、勧善懲悪で1話完結のマンネリズム作品を得意としている。今の『科捜研の女』や『相棒』に繋がるターニングポイントは、1988年から2009年まで約20年間続いた藤田まこと主演『はぐれ刑事純情派』シリーズだろう。必殺シリーズなど時代劇俳優の重鎮だった藤田を主役に添え、派手な銃撃戦やトレンディドラマが全盛期だった当時、「罪を憎んで人を憎まず」精神で、正義を貫く姿勢と人情味溢れる一面を持つ姿は視聴者(特に高齢層)の共感を呼び、内容は地味だが、毎回恒例の娘や女将とのやりとりがホームドラマのような面白さもあり、藤田にしか演じられないハマり役に。さらに毎シリーズ半年間放送し全444話を制作。それだけに毎日のように再放送され、1話完結なのでどこから見ても楽しめ、生活の一部として溶け込んでくる。以降『はぐれ刑事』が放送された水曜21時枠は『相棒』へと繋がり、『科捜研の女』からスタートした「木曜ミステリー」枠でもこのフォーマットを踏襲している。

 『科捜研の女』は、沢口が演じる法医学研究員・榊マリコが、科学捜査の技術を駆使して難事件を解決していくミステリードラマ。「科学は嘘をつかない」を信条にあくまでも科学捜査で答えを導きだし、真相究明には周りの雑音を気にせずクールに対応していく一方、時折捜査をしながら涙をこぼす情に熱いギャップが魅力で、人間重視の姿勢が人気の理由だ。この役がハマったのも沢口自身が「マリコは分身のような存在(※)と語るように、沢口そのものの魅力が溢れている。

 『科捜研の女』スタート時、30代半ばの沢口は既に完成されていた主演級の人気女優だった。昔から変わらぬ美貌で、女優の中でも真面目で清楚。プライベートが謎で、バラエティ番組へは極力出演せず素顔を出さないことが、沢口がいつまでもイメージが変わらない理由。Season1は今のクールな大人マリコとは違い若干ズレた面白キャラだったが、登場人物たちの人間模様とともにマイナーチェンジをしていく中で、様々なキャストや、時事ネタを取り入れた事件があっても、マリコのブレない意志や正義感が変わらないことが観ていて安心感できる。

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