『バットガール』はなぜお蔵入りになったのか? 複雑に絡むDC事情を解説

 こんにちは、杉山すぴ豊です。ここ最近のマーベル、DCのアメコミヒーロー映画まわりのニュースや気になった噂をセレクト、解説付きでお届けします!

 今週はDCまわりでいい話も悪い話も含め、大きな(衝撃的な)ニュースがありました……。まずDCまわりでどのようなニュースがあったのか、まとめてみます。

・『アクアマン』続編、『アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム(原題)』にベン・アフレック演じるブルース・ウェイン/バットマンの登場が決定。
・劇場公開を予定していた『バットガール(原題)』が完成間際でキャンセル。劇場公開も配信もされない(現時点での決定)。
・ホアキン・フェニックス主演『ジョーカー』の続編公開がアナウンス。レディー・ガガの出演も正式決定。
・DCは今後10年にわたるDC映画のプランを発表。
・グラント・ガスティン出演のTVドラマシリーズ『THE FLASH/ザ・フラッシュ』がシーズン9で終了。

 というものです。ファンにとって衝撃だったのは『バットガール』のキャンセルですね。そしてこれらの話はかなり絡み合っています。

 ここでDCの映画・ドラマ(TV、配信)の状況をざっと整理しておきましょう。これはマーベル(スタジオ)と比較するとわかりやすいかと思います。マーベルは現状、劇場公開映画とディズニープラスで配信されるドラマは同じ世界観、いわゆるマーベル・シネマティック・ユニバース(以下、MCU)の中の出来事とされており、キャラや設定が連動しています。

 一方、DCもこれに近いことを目指しました。それがDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)と呼ばれた戦略です。このDCEUという呼称は最初メディアとファンが使っていて“公式”ではなかったようですが、最近DC自身も時々使うようになったみたいです。このDCEUはザック・スナイダーの『マン・オブ・スティール』や『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』『ジャスティス・リーグ』を核にしています。なので“スナイダーバース”という言い方をするメディアもいます。一応この世界観の中には『ワンダーウーマン』2作、『スーサイド・スクワッド』系3作(『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』も含む)『アクアマン』『シャザム!』が入っています。

『シャザム!~神々の怒り~』(c) 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c) DC

 しかしながら『ジャスティス・リーグ』が今一つ盛り上がらなかったことや『ワンダーウーマン』などがMCUよりも他のヒーローとの絡みが少なく、単独ヒーロー映画としての個性が強いことから、DCEUという括りはかなりゆるい。加えてDCはドラマ『ARROW/アロー』を起点とするTVドラマシリーズが人気で、これらはDCEUとリンクしていない。さらにバットマンについてはDCEU版のベン・アフレック以外にも『ダークナイト』のクリスチャン・ベールや『バットマン』のマイケル・キートンのイメージも色濃く残っているわけです。

THE FLASH Trailer (2022)

 こうした中、DCは“これらはすべてマルチバースの関係という解釈を導入“します。この解釈が本格的に導入されたのが、TVドラマ版のDCヒーローたちがクロスオーバーする『クライシス・オン・インフィニット・アース』というエピソードで、ほぼすべての歴代DCドラマやDC映画世界がマルチバース関係で“並行世界”として“共存”すると説明されました。さらにDCはこのギミックを使ってDCEUの立て直しを考えます。それがエズラ・ミラー出演の映画『ザ・フラッシュ(原題)』なのです。ミラー版フラッシュはDCEUの人気ヒーローの一人。彼は光速で走るので時空を超えられる、だからマルチバースを駆け抜けられる。さらにコミックではフラッシュが過去を変えたことで新たなバースが生まれるというエピソードがあります。

 ミラー版『ザ・フラッシュ』によって新たなDCEUが生まれる予定です。その目玉は、この新世界のバットマンはベン・アフレック版ではなくマイケル・キートン版に“変わる”(戻る)ということでした。そして最初の予定では『ザ・フラッシュ』の後に『アクアマン』の続編『アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム』が公開のハズでした。だから『アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム』の時にアクアマンが会うべきバットマンは、キートン版だったのです。しかし諸般の事情で『アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム』が先になったので、そうなると、まだ彼の世界のバットマンはアフレック版の“まま”なので、急遽、ベン・アフレックの登場シーンが必要になった、ということなのでしょう。一方『バットガール』は『ザ・フラッシュ』の後の公開予定だったので、ここに登場するバットマンはキートン版であり、マイケル・キートンで撮影が進んでいた、というわけです。

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