『家庭教師のトラコ』で14年ぶり遊川和彦作品出演 中村蒼、年を重ねてからの変化と気付き

 橋本愛が主演を務める『家庭教師のトラコ』が、毎週水曜22時から日本テレビ系で放送中だ。橋本演じるトラコは、世の中にある現実を子供たちに見せることで、「正しいお金の使い方」を教えていく家庭教師。そんなトラコを支える幼なじみの福田福多役を、中村蒼が演じている。遊川和彦が脚本を務める作品への出演は14年ぶりとなる中村に、本作にかける意気込み、橋本との共演について、話を聞いた。【インタビューの最後には、コメント動画&サイン入りチェキプレゼント企画あり】

「お芝居は相手のためにするものだと思う」

ーー今回、トラコの幼なじみの福多役を演じられていますが、福多はどんなキャラクターだと考えていますか?

中村蒼(以下、中村):福多は、トラコの過去や、野望を知る唯一の人間なんですが、彼女を全力でサポートしている人間でもあり、すごく優しい人です。もともと人の話を聞いたり、人のために何かをすることが好きな、正義感溢れるいい人だと思っています。

ーーそんな世話焼きな人でありつつ、東大卒の元官僚というエリートな一面もありますよね。

中村:福多はエリートなんですが、一方で自分の思っていた理想と現実の違いみたいなものに上手く折り合いがつけられなくて、そこでトラコと久しぶりに出会って一緒に仕事をしていく、という感じなんです。僕からしたら、うらやましいぐらいの頭の良さを持っている人ですね。トラコのサポートもしつつ、料理を作ったり、自分でもデイトレードでお金を増やしていたりもしていて。僕とは反対で、似ても似つかないぐらい、完璧な人だと思います。

ーーそういった福多役を演じるにあたってどのような工夫をされましたか?

中村:脚本の遊川さんや、監督やスタッフの方々と大事にしようと話したのは、明るい一面とインテリな一面のバランス感ですね。福多は内面は明るくていい人で、トラコと二人でいるときは福多が一方的に話しかけてトラコのいろんな何かを引き出そうとしています。でもそれだけではなく、東大卒の元官僚というインテリ感も大事にしないといけないので、ただ優しくて明るい良い人になりすぎないように心がけています。そのバランスが今できているのかはわからないですけど、福多の2つの面を頭に置いてお芝居をしています。

ーー遊川さんとは、『学校じゃ教えられない!』(2008年/日本テレビ系)以来、14年ぶりにご一緒されることになりますが、お話はされましたか?

中村:役についてのアドバイスを現場でいただいています。そのスタイルは14年前にご一緒したときから変わってないので、確かにこんな感じだったな、という懐かしい気持ちです。脚本家さんから現場で直接アドバイスしていただくことは、他の作品では1度もなかったので。

ーー遊川さんは現場によくいらっしゃるんですか?

中村:よくいらっしゃってます。セリフやストーリーを1番理解している人が現場にいるので、OKが出たら本当に良かったんだろうなと思えて、頼もしさも感じています。

ーー遊川さんの脚本はどういった部分に魅力を感じますか?

中村:遊川さんの脚本が面白いのは、「どういう意味なんだろう」と思ってしまうような、やりとりやセリフが続くのですが、気がついたら、日常生活における欺瞞や、表には出したくない本音などを突いてくるところだと思います。遊川さんが手掛けた作品の全てを観ることができているわけではないのですが、今の撮影でも感じているところです。

ーー中村さんは「14年の間に役者としてどれ程成長したのかを見られるような気がして緊張している」とコメントされていましたが、その部分は実際に現場に入られてみてどうですか?

中村:やっぱり初めてより、14年ぶりの方が余計緊張しますよね。あの頃と何も変わってないって思われてるんじゃないかとか、そういうことばかり考えてしまって。あんまり気にしない方がいいとは思うんですけど、遊川さんも現場にいらっしゃるのでどうしてもそういう緊張感はあります。正直、自分では自分のどこが変わったか、具体的なところはわかっていないです。でも、疑似体験ではありますが、さまざまな役を通していろんな人の人生を少しだけでも歩ませてもらってきたので、きっと何か変化はしているんじゃないかな。なので、そういう一面を見せられたらなと思っています。

ーーこの14年で、お仕事をする上でのスタンス、考え方は変わりましたか? 年齢的にも30歳を越えられて、いろいろ変わってくるタイミングかと思います。

中村:14年前は仕事も始めたてで、現場に入って緊張はするけど、仕事とどう向き合うかとか、こういうふうになりたい、といったこともあまり深く考えていなかったと思います。でも今思うのは、お芝居は相手のためにするものだということ。「自分がいかにこの台詞を上手く言うか」よりも、「自分のセリフで相手がどういうお芝居をするか」ということの方が大切だと思います。自分のセリフは相手のためにある、というか、相手に影響を与えるための自分のセリフなのではないか。そうやって、お互いが影響し合って1つのシーンが出来上がる、そういうことなんだろうなと考えています。

ーー今まで共演されてきた方の中で一番影響を受けた人は誰になりますか?

中村:たくさんいます。もちろん橋本さんもです。西島秀俊さんは前にドラマでご一緒させていただきましたが、(西島さんの演技は)僕の心にまっすぐ届いて響いたというか……。伝えるのが難しいのですが、対峙したときにお芝居に対しての誠実さみたいなものを強く感じました。

ーー今後は中村さんが影響を与えていく立場になりますね。

中村:そうですね……。年を重ねていくと、自分もそういう立場になっていくというか、気がついたらあのときすごいなと思った人の年齢になっていたみたいなことがあるわけじゃないですか。頑張らないといけないですね。

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