『女神の継承』は『哭声/コクソン』×『ヴィジット』 いつまでも残り続ける後味の悪さ

 比較的中盤までは穏やかに観ることができます。それこそ、お盆休みに田舎の親戚の家に遊びにいったときの感じと言えばいいでしょうか。しかし、徐々に徐々に不穏な空気は広がっていき、残り1時間となったあたりからは、ひたすら嫌な感じの連打技。美しい娘・ミンが、同一人物とは思えないほど、顔が豹変していき、身体が痩せ細っていく姿、やたらリアルな血の描写と謎の黒い液体、絶叫する祈祷師、そして人非ざるものの動きの気持ち悪さなど、撮影部隊が捉える映像のひとつひとつがやたら生々しい。

 極め付きはとある“盗撮映像”。M・ナイト・シャマラン監督作『ヴィジット』のあのシーンに通ずる、身体がビクッとなること間違いなしの秀逸カットがあります。暗視映像で捉えた目って何であんなに怖いのでしょう。

 「これ、どうやって解決するんだよ……」の思いを無視するように、最後の30分はもう祭り状態です。そして、「あーよかった」というラストになることもなく……。そのあたりの後味の悪さはまさに『哭声/コクソン』の兄弟作といっていい仕上がりです。科学では証明できない、土地や人に宿る“呪い”。千空のような人間が実在したら、それらもいつか解明されるのでしょうか。

 Netflix『呪詛』とあわせて、どんよりと残り続ける後味の悪さ、この夏に味わうことをオススメします。

■公開情報
『女神の継承』
7月29日(金)シネマート新宿ほかにて先行上映中
8月12日(金)より、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
原案・プロデュース:ナ・ホンジン
監督:バンジョン・ピサンタナクーン
出演:サワニー・ウトーンマ、ナリルヤ・グルモンコルペチ、シラニ・ヤンキッティカン
配給:シンカ
提供:シンカ、エスピーオー
後援:タイ国政府観光庁
協力:OSOREZONE
2021年/タイ・韓国/タイ語/131分/カラー/1.78:1/5.1ch/英題:The Medium/字幕翻訳:横井和子/R18+
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公式サイト:https://synca.jp/megami
公式Twitter:@megami_rangzong

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