柄本佑の“受け止め力”によって成り立つ『空白を満たしなさい』 真実の先にあるものは?
「復生者の会」で徹生が出会うラデック(ブレーク・クロフォード)との場面もそうだ。火事で燃える家に飛び込み人助けをした勇気が称賛されるラデックだったが、彼の本心は複雑だった。火の中で死ぬことを悟ったラデックが感じたのは後悔の念。たとえ死に際に英雄扱いをされたとしても、彼が罪を犯した過去が消えるわけではない。
逆も然りで、徹生の死がそれまでの人生を否定するわけではないと、ラデックは語りかける。
「死は傲慢に人生を染めます。たまたま最後にこぼしたインク壺の色が全部一色に染めてしまう。そんなことは間違ってます。私の死とあなたの死は、私たちが生きてる間にした数えきれないほどの行為のたかが一つじゃないですか」
これは『空白を満たしなさい』の核に触れるセリフであり、佐伯はなぜ徹生を殺したのかというさらなる死の真相、そして本当の“空白“を満たしていくこれからの展開で、徹生にとって支えになっていく言葉と言えるだろう。
■放送情報
『空白を満たしなさい』【全5回】
NHK総合にて、毎週土曜22:00〜22:49放送
出演:柄本佑、鈴木杏、萩原聖人、渡辺いっけい、うじきつよし、藤森慎吾、ブレーク・クロフォード、風吹ジュン、阿部サダヲほか
原作: 平野啓一郎『空白を満たしなさい』
脚本:高田亮
音楽:清水靖晃
制作統括:勝田夏子(NHKエンタープライズ)、落合将(NHK)
演出:柴田岳志(NHKエンタープライズ)、黛りんたろう
写真提供=NHK