『ペーパー・ハウス・コリア』は対立構造をとことん描く 韓国版ならではの見どころを解説
脇を固める魅力的なキャストたち
それにしても今回の韓国版は、主要キャストだけでなく、脇を固める面々も魅力的だ。統一造幣局の局長、チョ・ヨンミンを演じるパク・ミョンフンのクズ男ぶり、造幣局の職員で局長の不倫相手のユン・ミソンを演じるイ・ジュビンの妖艶さに目がいく人も多いことだろう。
その中で筆者が特に注目したのは、ソン・ウジンに内緒で、勝手に造幣局への潜入作戦を実行する北朝鮮出身の警察要員、チャ・ムヒョクを演じたキム・ソンオだ。冷酷そうな風貌で、ウジンを威圧する雰囲気を持っているが、よく見るとなかなか端正なルックスだ。彼は、先日Netflixで配信スタートした、ヒョンビンとハ・ジウォンが出演したドラマ『シークレット・ガーデン』で、ヒョンビンが演じる会社社長の秘書役をコミカルに演じたその人である。
当時は前髪をまっすぐに切り、お世辞にもイケメンとはいえない風貌だったが、それが功を奏したのか、三枚目の愛すべきキャラクターとして存在感を示した。今回はまるで違った渋い雰囲気を醸し出しており、一瞬同じ人物なのかと疑ってしまうほど、その違いに驚いてしまう。今後、キーパーソンになっていく可能性があるためメインキャスト同様、ソンオの演技にも注目していきたい。
南北統一は夢のまた夢なのか? とことん対立構造を描く韓国版
物語の展開に話を戻すと、朝鮮半島で長く続いていた休戦状態が終わり、北と南に分断された国が再統一することになったところから、韓国版は始まる。北に住む者が、夢と希望を持って南(韓国)へやってくるのだが、最初こそ希望に満ちあふれていたものの、次第に北出身者への差別に苦しむことになる。
長年分断された国家が再統一を試みるのは夢物語だといわんばかりに、物語の中では頻繁に「対立構造」が描かれていく。造幣局で人質になる人たちが北出身者と南出身者に分けられ、対立するように仕向けられていくのは、韓国版ならではの展開だ。自分たちの身を守るために人質同士がお互いを監視し密告し合う様に、人間のおぞましさを見る。
また、強盗団に立ち向かう警察の面々も北と南でしっかりと分かれている。先頭に立って教授と交渉し、現場の責任者でもあるソン・ウジンに内緒で、勝手に作戦を実行する北朝鮮出身の警察要員、チャ・ムヒョクをはじめとして、チームワークが盤石だとは言い難い。
こうしてみていると、長年分断され、同じ民族なのに違う国として歩んできた者同士が寄り添い合い、力を合わせていくことは夢物語なのだろうか……と考え込んでしまう。本作で「南北統一」というテーマを掲げた以上、何かしらの結論を物語の中で導いていく必要があるだろうが、今後どんな展開を見せていくのか、注視していきたいところだ。
■配信情報
『ペーパー・ハウス・コリア:統一通貨を奪え』
Netflixにて全話独占配信中