『ちむどんどん』房子がフロアを沸かして大活躍 暢子は愛に“正直に”話す必要があったのか

『ちむどんどん』想いの丈を伝えすぎた暢子

 矢作(井之脇海)とほか2名の厨房メンバーが急に退職届を残して姿を消してしまったことで、大波乱が予想された朝ドラ『ちむどんどん』(NHK総合)第62話。しかし、急遽厨房に入ることになった房子オーナー(原田美枝子)の覇気に圧倒されるばかりだった。

 普段は綺麗に結えた髪を、“しっかり”くくってコック帽子をキッチリ被った房子。その横で相変わらず髪を結えない暢子(黒島結菜)や、「あなたいつもそんな髪で厨房たってたの!?」と房子が叱らなかったことも気になりつつ……予約いっぱいの「アッラ・フォンターナ」のキッチンは、彼女の料理人としての腕前や的確な指示によって回っていた。メイン料理の調理をしながら、暢子が作ったソースの味や料理の盛り付けを確認、さらには発注指示までテキパキと動いていく。しかも発注指示の際に「今やらないと後で困る」と一言添えることで、「こんなに忙しい今にやるんですか?」という疑問を最初から抱かせない。こういう、一言の「〜だから」を添えるだけで上司からの指示が圧倒的にストレスフリーになるものだなと感銘を受ける。

 常にフロアの様子に注意を配り、お客さんが料理を待ち続けてテンションが下がらないように、すかさず待たせている人に先に皿を出す臨機応援具合。房子はいわば、超一流のDJだ。彼女のおかげで、キッチンの数はいつもより少ないのに、満席になったフォンターナのフロアにいるお客さんは誰も不満そうにしていない。みんな多幸感に溢れて食事を楽しんでいた。そういう腕のいいDJはただ、お客さんのいる空間を沸かせるだけにとどまらない。一緒にスタッフが動くDJブースという名のキッチンも盛り上げていくのだ。まさに、「これが真のストーブ前……!!」と呆気に取られてしまうほど、手本となる動きを見せる房子に暢子は感嘆としていた。「楽しい! 身体中の血が騒いでる。オーナーと一緒に働けることがでーじ楽しい!」という彼女の言葉は、働くことの楽しさを、メンターを見つけた時の嬉しさを実直に伝える良いセリフだ。

 ただ、そんな彼女がその“ハイ”な状態で夜に一人、厨房で仕込み作業をしながら残っているところに愛(飯豊まりえ)がやってくる。用事を聞いても無言で立ちすくむ彼女に、「ちょうど良かった、実はうちも愛さんに話したいことがあった」と言う暢子。嫌な予感がする。それは的中し、暢子はその日の高揚感のままに和彦(宮沢氷魚)に対する自分の想いの丈を愛に“伝えすぎてしまった”。和彦が好きなこと、それに気づかなかったけど最近気づいてしまったこと、生まれて初めて男の人が好きになったこと、でも諦めること。

 前提として暢子側からすれば、好きという感情を自覚したが故に仕事でミスを連発させ、苛立っていた。仕事と恋愛、どっちがしたいのか。その問いを悶々と考えていた彼女にとって、今日のフォンターナの忙しさは“雑念”を取り払ってくれるものだったのだ。「今日何も考えられないくらい忙しくて、体を動かしていくうちになんかでーじすっきりしたというか、やっと答えが見つかったというか」と話す暢子。

「和彦くんは前から愛さんが好きで、愛さんと付き合っている。だから、好きだけど、綺麗さっぱり諦める。でも愛さんには嘘はつきたくないから、全部言ってしまいたくて。困らせるようなこと言ってごめんね」

 こんなことを言われてしまったら、ただ眉毛を八の字にして笑うしかない愛。思わず、「すごいねえ、暢子ちゃんは」という言葉が彼女の口から漏れてしまう。

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