『トイ・ストーリー4』ウッディが選んだ“生き方”とは? 吹き替え声優陣の好演にも注目
あらゆるオモチャには自我があり、人間の見えないところで喋ったり動いたりしているかも? そんな楽し気な発想から生まれた、ピクサー制作のCGアニメ映画『トイ・ストーリー』(1995年)。記念すべき第1作から15年後に公開された『トイ・ストーリー3』(2010年)で、“オモチャにとっての真の幸福とは何か? それはいつまでも子どもに遊んでもらうことだ”という回答を得て、シリーズは有終の美を飾った……はずだった。しかしそれから9年後に『トイ・ストーリー4』(2019年)が作られたのだ。監督のジョシュ・クーリーは制作当時を振り返り、こう語っている。
「人に会うたびに言われたよ。なぜ4作目を作るのか、子どもの頃の思い出を壊さないでくれと」(※)
シリーズ第3作で、ウッディやバズの持ち主だったアンディは進学を控えて、大学寮へ引っ越すことになった。アンディは子どもの頃から遊んでいた大切なオモチャを4歳の少女ボニーにそっくり譲る。ウッディたちは車で去り行くアンディを寂しげに見送りつつも、ボニーの家のオモチャたちと共に新しい人生を送ることになったのだ。
これを以て大人になったアンディと、彼の大事なオモチャの別れ、そして新しい持ち主との出会いを描いて3部作としても収まりの良い落としどころを得たと言えよう。しかしジョシュ・クーリー監督は前述のように、なぜ第4作を作るのかという問いかけに対し「ウッディにはまだ語るべき物語がある」(※)と考えていた。そのアンサーが『トイ・ストーリー4』のドラマを通じて提示されたのだ。
シリーズ第2作までウッディの仲間として出演していた陶器製の羊飼いの人形ボー・ピープが、『トイ・ストーリー4』では久しぶりの再登場を果たす。第3作には出てこなかった彼女だが、実は他所の家に譲られていたことが映画の冒頭で語られる。その後ボーは様々な家を転々と渡り、売り飛ばされたアンティークショップで何年もほこりをかぶりながら過ごした挙句、そこから逃げて持ち主のいないオモチャの人生を過ごしていた。映画中盤でウッディと再会を果たした彼女の言葉、「子ども部屋にこだわる必要はない」が物語の終盤へ重みを持って進んで行く。自分の持ち主ボニーのもとへ帰ろうとしていたウッディが、映画終盤で選ぶ生き方がいかなるものか。第4作をまだ観ていない人のために詳細は避けるが、本編で確かめていただきたい。
本作の結末について、ジョシュ・クーリー監督は「3作目の先に進むにはこれしかなかった。前作でウッディとアンディがお別れをした。ここでのウッディはもう誰かのオモチャじゃない、1人の子どものためでなく、みんなのために生きるんだ」(※)と語っている。同時に「最初からこう終わると決まっていたわけじゃない。面白いことにこの終わり方じゃなかった時は感情面の深みが感じられなかった」(※)とも話しており、当初は公開版とは異なる幕切れも検討されていたようだ。現在のような賛否両論の議論を呼ぶようなラストと違う、別の終わらせ方があったのかもしれない。
とはいえ、3DCGアニメの技術進歩自体には観るべきものがあり、お馴染みのキャラクターたちの動きや表現力はもちろん、背景美術、人間の子どもの描き方などは過去のシリーズと比べて大きく進歩している。この点に於いては同作をずっと観てきた人なら実感できる良い点と言えるだろう。