チ・チャンウクが誘う魅惑的な世界 ミュージカル×重いテーマが魅力の『アンナラスマナラ』

 ドラマ『梨泰院クラス』のキム・ソンユン監督が手掛けた作品ということで注目を集めているNetflixシリーズ『アンナラスマナラ -魔法の旋律-』。

 本作で主演を務めるのは『ヒーラー~最高の恋人~』のチ・チャンウク。謎の多い魔術師リウルを演じている。そして困難に直面しながらも日々を懸命に生きる女子高生ユン・アイ役をチェ・ソンウンが、アイのクラスメートで学年トップの秀才ナ・イルドゥン役をファン・イニョプが演じる。

 本作は“ミュージックドラマ”と銘打っており、時にミュージカル調になり、物語の最後はまるで1本の舞台を観終わった気分になる。チ・チャンウクをはじめとした出演者の魅力とともにお伝えしたい。(※一部ネタバレあり)

「あなたは魔法を信じますか?」爽やかな笑顔で問うチ・チャンウク

 チャンウクが演じるリウルは、寂れた遊園地で暮らしている。父親が事業に失敗し、妹と二人で貧しい生活を送るアイの前に現れ、彼女がピンチと遭遇するたびに、「アンナラ、スマナラ」と呪文を唱え、魔術で救いの手を差し伸べる。

 リウルの決め台詞は「あなたは魔法を信じますか?」。リウルは、黒い帽子と黒いマントをまとい、見るからに謎めいた雰囲気を漂わせているが、もともと持っている隠しようのない爽やかさが印象的で、全身黒づくめなのに、なぜか華を感じる。リウルが突然目の前に現れ「あなたは魔法を信じますか?」と問いかけてくれば、筆者は間髪いれずに「はい!」と答え、「アンナラスマナラ」と唱えてもらうだろう。

 物語の前半は、アイの生い立ちを中心に展開していくが、後半は、ある犯罪をきっかけにリウルの悲しい過去が浮かび上がってくる。アイと接している時は屈託のない笑顔を見せているリウルが、自身の過去と向き合う時に見せる切ない表情に胸が痛くなる。

 魔術師という非現実的な存在と、心に傷を負った生身の人といった二面性を上手く演じ分けているチャンウクの存在があるからこそ、この作品の魅力が増したことは間違いないだろう。

 最初は、リウルを怪しい人間だと疑い、時には「消えて!」と罵倒するほど拒否をしていたアイも、次第に心を開いていくようになり、アイのクラスメートで常に学年トップの成績を維持しているイルドゥンもリウルに心を寄せていく。

 「マジックを教えてほしい」と請うアイに対して、嬉しそうに手ほどきをするリウルを演じるチャンウクがとても魅力的だ。

チェ・ソンウンが困難に直面する女子高生を好演

 貧しい生活を強いられ、アルバイトをしながら妹を養い、勉強に励むアイ。ヒロインなのに髪の毛はボサボサで、ダサい服を着て登場するのは少し気の毒だな……と思ったが、そんなことは気にならなくなるぐらい、ソンウンはみずみずしい演技を見せている。

 謎めいたリウルに対して最初は拒否反応を示すアイだが、リウルの魔術によってさまざまな奇跡を目にしていく。「早く大人になって、今の貧しい生活から逃れたい」ということばかり考えているアイにとって、リウルは「大人になるとはどんなことなのか」を教えてくれる重要な存在になっていく。その繊細な気持ちの変化をソンウンは生き生きと演じ、見る者をひきつけている。

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