『ジュラシック・パークIII』は“駄作”と呼ばれた意欲作? ラプトルとグラント博士の牽引力

『ジュラシック・パークIII』独自の魅力

 その中で興味深いのは、今作で大胆にもこれまでのシリーズの看板だったティラノサウルスに代わり、スピノサウルスがその立ち位置で登場すること。両者の戦いが映画の早い段階で描かれ(学術的な本作の恐竜描写の整合性については本稿では触れないことにしよう)、あっさりティラノを殺してしまうのだから、かなり思い切っている。しかし、逆にそうしたことで、視聴者が本作の脅威がスピノサウルスであることをわかりやすく認識することができ、効果的なため、ある意味英断でもあるのだ。

 本作はスピルバーグの意志を継いだジョー・ジョンストンが監督をしているのだが、彼はこれまでのシリーズを踏まえた上で、彼なりにこだわりの演出を本作に多く取り入れている。ラプトルがアマンダ(ティア・レオーニ)に“ドッキリ”を仕掛けるシーン、プテラノドンが霧の中から姿を現すシーン、スピノサウルスが電話を飲み込んだ(正確には電話を持っていた人間を食べた)ことで、近づくと着信音が聞こえてくる仕掛けなど、かなり野心的で面白い。プテラノドンの一連のシーンは私個人のお気に入りでもあるが、前作までに登場しなかった新たな恐竜たちの活躍を見せるのが上手い。それは、やはり基本的にラプトルというシリーズに通底する“ヴィラン”への描写に重きを置いているからこそ出来た冒険なのだ。これが、例えばシリーズの顔でもあるティラノサウルスや、ラプトルの両方を全く出さないようだったら作品全体の印象や評価はさらに悪い意味で大きく変わっていただろう。

 そして、そこでもグラント博士の存在感が効いてくる。シリーズの中で最も愛されているキャラクターのカムバックはファンとしてはやはり嬉しく、博士が相変わらずお金に釣られて恐竜の島にやってきちゃうところも、もはや微笑ましい。彼がいるだけで、『ジュラシック・パーク』作品としての安定感が出るのはやはり大きな強みだろう。彼が悪夢の中でラプトルに「アラン」と呼ばれるシーンは、映画史に残る問題映像としても、ある意味で愛されている。サム・ニールに限らず、ローラ・ダーン演じるエリー・サトラーもカムバックし、他にも『ファーゴ』のウィリアム・H・メイシーや、『マダム・セクレタリー』のティア・レオーニ、名脇役俳優で知られるマイケル・ジェッターなど演技派俳優が勢揃いしていて、実はキャスト面でも豪華な本作。探そうと思う意志があれば、掘れば掘るほど良いところが発掘できるような作品、それが『ジュラシック・パークIII』なのだ。

■放送情報
『ジュラシック・パークIII』
日本テレビ系にて、6月10日(金)21:00〜22:54放送
出演:サム・ニール、ウィリアム・H・メイシー、ティア・レオーニ、アレッサンドロ・ニヴォラ、トレヴァー・モーガン
監督:ジョー・ジョンストン
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ
製作:キャスリーン・ケネディ、ラリー・フランコ
脚本:ピーター・バックマン、アレクサンダー・ペイン、ジム・テイラー
原作:マイケル・クライトン
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