『ストレンジャー・シングス』シーズン4のテーマを紐解く なぜホラー色が強まったのか?
イレブンも、彼女自身のトラウマと向き合い、真実を知る。シーズン1から振り返ってみても、これまでホーキンスの仲間たちはたくさん傷ついてきたし、子供だった彼らにとってトラウマになるような出来事はたくさんある。それは、大人になることも意味しているのだ。歳を重ねるにつれてトラウマを思い出す機会も増え、いくつもの罪悪感を抱えながら日々を乗り越えていかなければいけない。シーズン3の時点ですでに「彼らはもう子供ではない」と謳われていたが、その時に彼らは「恋」を味わい、シーズン4ではさらに大人になる上で“死”や“トラウマ”、“罪悪感”に向き合い、乗り越えるという試練を課せられているのだ。
今シーズンは新たな登場人物も増え、既存のキャラクターに割く時間が減ってしまったことで、一部のキャラクターデベロップメントがいまいちになってしまっているのも否めない。特に、カリフォルニア組がそうだ。ジョナサンはナンシーとスティーブの復縁を視聴者に前向きに捉えてもらうために、制作側から明らかに意図的にダメンズにされてしまっているし、マイクもシーズン1でリーダー的存在だったのに、今では何だか“軽い”男の子になってしまっている。ウィルに関しては、シーズン1からずっと孤独な存在で、彼自身の物語が深掘りされていないのが気になってしまうものだ。しかし、シーズンごとに新しい登場人物が登場し、そこに注力されることもまた、「大人になること」を象徴するような演出である。歳を重ねるにつれ、新しい環境、新しい出会いが待ち受けている。昔ながらの友人とはいつの間にか距離もできて、遠距離になってしまった恋人とは心も通じづらくなってしまう。新しい人物の登場時間の長さは、そのキャラクターと関わるキャラがどれだけその人と関わっていたり、意識的になっているかということの表れでもあるのだ。
シーズン5でファイナルを迎える『ストレンジャー・シングス』。シーズン4の時点で、あのあどけなかった子役たちの平均年齢は20歳になっている(お兄さん・お姉さん組は平均30歳)。もともと、本作が子供時代を思い起こさせるワクワク感、または憧れ、叶わなかった願いを美しく描く点に大きな魅力があっただけに、彼らでも大人になってしまうことが少し切なく、寂しい気持ちにもなってしまう。
だけど、大人になることで倒せる邪悪な存在もいる。大人になっても、最初に“裏側の世界”でウィルが電球を使ったように、みんなで知恵を絞って、子供のおもちゃを使って交信したり、自転車に乗って、夜道を猛スピードで走りながら友達を助けに行くことだってする。第7話で、「変わらないものも、そこにはある」ということをホーキンス組が体現してくれた一連のシーンは、『ストレンジャー・シングス』の醍醐味そのものでもある。
7月1日に配信される第8話、第9話をもって幕を閉じるシーズン4。解決しなければいけない問題が山積みの中、彼らはこの春休みに何を得て、何を失うのか。
■配信情報
Netflixシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』
シーズン1~シーズン4 Vol.1:独占配信中
シーズン4 Vol.2:7月1日(金)独占配信開始
クリエイター:ザ・ダファー・ブラザーズ
製作総指揮:ロス・ダファー、マット・ダファー、ショーン・レヴィ
出演:ウィノナ・ライダー、デヴィッド・ハーバー、フィン・ヴォルフハルト、ノア・シュナップ、ミリー・ボビー・ブラウン、ケイレブ・マクラフリン、ゲイテン・マタラッツォ、カーラ・ブオノ、ナタリア・ダイアー、チャーリー・ヒートン、ジョー・キーリー、セイディー・シンク、プリア・ファーガソン、マヤ・ホーク、ジェイミー・キャンベル・バウアー、エドゥアルド・フランコ、ジョセフ・クイン、ロバート・イングランド、 シャーマン・オーガスタス、メイソン・ダイ、ニコラ・ジュリコ、トム・ヴラシア