窪塚洋介、『GO』は「長男みたいな存在」 息子・窪塚愛流との“親子共演”にも言及

 映画『GO』が6月4日に新宿武蔵野館で上映され、上映前のトークイベントに主演を務めた窪塚洋介が登壇した。

 今回の上映は、5月27日から6月9日にかけて、新宿武蔵野館、シネマカリテにて開催されている「新宿東口映画祭2022」で行われたもの。MCを務める映画アドバイザーのミヤザキタケルとともに、約30分に及ぶトークを展開した。

 脚本家としても活躍する金城一紀の直木賞受賞作を、宮藤官九郎脚本、行定勲監督のタッグで映画化し、2001年に公開された『GO』は、韓国の国籍を持つ杉原(窪塚洋介)と、彼が恋に落ちた桜井(柴咲コウ)の関係を描いた作品。

 公開当時から20年以上経っての今回の上映について、主演を務めた窪塚は「あの時自分の人生をかけて、『自分自身が誰なんだ』という思いに深くなりながら一生懸命に取り組んだことが、今日この時間に繋がっているのだと、とても感慨深いです。あの時に定まった自分自身だとか、据えた腹だったりとかの延長線上にいるのですが、その後紆余曲折……ちょっと高い所から落っこちちゃったりもしましたけれど、それでもあの時に見定めた方向がここまで届いているのかと思うと、とても嬉しいです」と冗談も交えながらコメント。

 自身のキャリアにおいての『GO』の位置付けを聞かれると、「この作品では多くの賞を頂きました。特に日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を頂いて、それが史上最年少の受賞だったのですが、そのことで調子に乗ってしまったところもありました。その時自分についた自信というのは、揺るぎのないものになり、今の自分の土台になっているところでもあるので、例えば『1本選べ』と言われて選べるものではありませんけれど、『GO』はやはり一番最初に思い浮かぶ、『これかな』と思う作品ではあると思います。ただ、どの作品も自分の子供みたいなもので、子供はみんな好きってなっちゃうんだけれども、『GO』は長男みたいなものですかね」と、『GO』を“長男”だと例えた窪塚。

 そんな窪塚の実の息子で、同じく俳優としても活動している窪塚愛流は現在、窪塚が劇中で演じた杉原と同じ18歳。窪塚はミヤザキからそのことを指摘されると、「今言われて、『確かにそうだなぁ』と思ったのですが、当時と今はあまり変わっていなくて。年齢は確かに重なってはいるけれど、あの時の気持ちの延長線上ではあるので、子供が18歳になって、『お父さんは……』と自分で言うようになりましたが、子供が親にしてくれるというか、『お父さん』と呼ばれてお父さんになるんだというようなところがあって。気づいたら親として息子と接するのですが、先週も3年ぶりくらいに叱りました。俺の方が叱られることが多いんですけれど、ただ向かい合って彼に投げかけている言葉というのが自分自身に返ってきているし、教えているようで教えられているし、育てているようで育てられているというようなところはありますね」と息子とのエピソードを明かした。息子との共演の可能性について聞かれると、「自分の父はサラリーマン、母は主婦でしたが、弟2人も俳優をしていて、息子も俳優をしていてという状況で、誰かと一緒にやることはあるのかなと思ってはいますが、なかなかなくて。そういうこと(共演)はあっても面白いとは思いますね。ただ、全員出ていたらウザいかな(笑)」と答え、会場を和ませた。

 また、窪塚は劇中で父親役を務めた山崎努とのエピソードについても言及。「公園の砂場で殴り合うシーンで、山崎さんから『本気で殴ってこい。気にするな』と言われたのですが、さすがに本気では殴られないし、でも本気で殴らないと怒られるしということで、行定監督のところに行って、『山崎さんがこう言っているのですが、どうすればいいですか?』って聞いたら、監督からは『お疲れ。頑張って!!』と言われて。『そんなアバウトな演出あります!?』と思ったんだけど、何とか“本気なんだけど本気では殴ってない”かたちでやったことを思い出しました」と貴重な裏話を披露した。

 さらに、20代の頃と40代になった今を比較して、「自分自身が楽しむとか、自分自身が幸せを感じて感謝して生きていくということが何よりも大事ということを、より感じるようになりましたね。この間も、海外の大きな仕事を断らざるを得ない状況があって、20代だったらそっちを選んでいたと思いますが、そういう状況でもブレずに、一番大事なものを大切に生きているとは思います。欲を出せばいくらでも出せるけれど、他愛もない今日ということの大事さ……。一回死にかけたことも、その考えを助けてくれていると思うのですが、それを大事にするということが何事にも良く、そのバランスが自分の腹に落ちていくということですかね」と語った窪塚。出演する作品の幅にも触れ、「自分は出演している本数は圧倒的に他の俳優さんに比べると少ないと思うのですが、そのかわり、心底やりたいと思った作品については、自分の人生の大事な時間、自分の力を使ってやろうと思うものしかやっていないです。それは自負しているところではあります。それがメジャーな作品であったり、海外の作品であったりということはあまり関係なくて、台本を読んで胸のドキドキを信じる。そういう直感で選ぶということは変わっていないです。『こうじゃなければいけない』というよりは『こうしたい』ということを大事にするチョイスをしています」と自身のスタンスについて語った。

 窪塚は今後の俳優業にも言及。自身のハリウッドデビュー作となったマーティン・スコセッシ監督の『沈黙-サイレンス-』(2017年)について、「今でもドッキリだったんじゃないかと思うことがあり、たまにポスターとかを見て『出てるよな』って確かめることもあります」と言いながら、「そういうことを繰り返すことができれば幸せだと思う。『GO』の時から言われていましたが、『これが最後の作品』だと思ってやる、『今日が最後の日』と思って生きるというのは、言うのは簡単でやるのは難しいけれど、そういう状態でいられるようにはなりたいと思っています」と語った。

 最後に、これから『GO』を鑑賞する観客に一言を求められた窪塚は、「GO!!」と力強く叫んで、トークイベントは幕を下ろした。

■公開情報
「新宿東口映画祭2022」
5月27日(金)~6月9日(木)14日間開催
会場:新宿武蔵野館(東京都新宿区新宿3-27-10 武蔵野ビル3F)、シネマカリテ( 東京都新宿区新宿3-37-12 新宿NOWAビルB1F)
後援:新宿区/公益財団法人新宿未来創造財団/一般社団法人新宿観光振興協会
協力:新宿東口商店街振興組合/国立映画アーカイブ
公式サイト:https://filmfest.musashino-k.co.jp/
公式Twitter:@shinjuku_f_fest

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