『ちむどんどん』暢子と賢秀に共通する悪癖 “間違いな態度”はどう改善されるのか
しかし、暢子の場合はそれでも周りの大人が諦めずに献身的な指導をする。一方、賢秀はジムの安里会長(具志堅用高)など助けようとし、彼を受け入れようとする人がいるのに、彼自身がそういう相手を受け入れることができない。いつも、誰かが彼のために何かしようとしたとしても、その前に自ら受け入れられることを拒否するかのように、距離をとり、その場から逃げ出すのだ。彼がそういう態度になってしまった原因は、やはり幼い頃から彼に甘かった母・優子(仲間由紀恵)にあると思う。どれだけ姉妹たちに迷惑をかけても、身内だから仕方ないと最終的に彼女たちからは受け入れられてきた。しかし、賢秀はそれでも自ら関係性の橋を壊していく。そして最も観ていて怖いのは、彼がそれを無自覚でしていることだ。自分を沖縄で騙した男の下で詐欺行為の片棒を担ぐように、他者の悪意に鈍感で誰かをすぐ信じる。そして裏切られた彼は、自分も同じように誰かに自分のことをすぐ信じさせ、裏切る行為を繰り返してきてしまっているのだ。
暢子も、和彦(宮沢氷魚)に愚痴るが、和彦に「いや、それはダメだよ……」と正当な意見を言われた際、ムッとした不機嫌な態度で黙ってしまった。この第9週の予告では、さらに自分を諭してくれた和彦に対して強く声を荒げて反論する暢子の姿が。この兄妹も、そろそろ態度を改めていかないといけないところまで来てしまったのではないだろうか。暢子も賢秀も、誰も彼らに何か意見してあげたり、助言を伝えたりしなくなった時に気づきを得られるのかもしれない。もちろん、この二人以外にもたくさんのキャラクターが問題を山積みに抱えている。彼らがどうしていくべきか。キャラクターが“間違い”ばかりを選び取ってしまうドラマとして、それを観ている側が他人に対する接し方を反面教師的に学び、彼らがどのように物事を解決して成長していくのか見守るというのも醍醐味ではないだろうか。
※高嶋政伸の「高」はハシゴダカが正式表記。
■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK