『17才の帝国』の続きは我々の未来へ 神尾楓珠、星野源ら記憶に刻まれたキャスト陣の好演

 5月7日のスタートより大きな反響を巻き起こした土曜ドラマ『17才の帝国』(NHK総合)が、ついに最終回を迎えた。

 17才の総理・真木(神尾楓珠)が、最先端AI「ソロン」を駆使して理想の政治の実現を目指す、青春SFエンターテインメント。第5話「ソロンの弾劾」では、真木が幼なじみのユキをAI化したスノウがサチ(山田杏奈)を取り込み暴走。ウーアがシステム障害を起こした結果、真木は総理から罷免されることとなる。筆者が印象に残ったのは「青い夢」という言葉。それはこれまで物語の中で幾度も出てきた「黒い渦」と対照的な意味を持つようにも思える。

 17才という若さでウーアの総理に選ばれた真木と、鷲田(柄本明)との板挟みにあいながらウーアに選ばれなかった平(星野源)。口にする言葉は嘘にまみれ、経験から心まで腐敗してしまった平は、真木の純粋さ、理想に触れ、一人葛藤する。それが第4話の「僕の17才は、もうとっくに終わってる」というセリフ。光を失った平の瞳の後にインサートされるのが“黒い渦”だった。

 平は7年前の献金事件の鍵を握る日記を手に入れる。そこに書かれていたのは、鷲田が迂回献金を指示していた事実であった。結果的に、鷲田は辞任。平が新総理に任命されることとなる。もし平が真木と出会っていなかったら、プロジェクト・ウーアを見守る立場にいなかったら──その別にあったかもしれない未来は想像することしかできないが、「真実を埋もれさせたくない」と真木がスノウの存在を住民に打ち明けたことが平を突き動かしていたことは確かだ。

 自分をユキに重ねていた事実を知り真木に嫌悪を抱いていたサチに、すぐり(河合優実)もまた17才の頃に憤りのない怒り“黒い渦”に飲み込まれそうになっていた。自責の念に駆られるサチを見て、すぐりは「17才の私はずっとそこにいる。あんたもそんな自分をずっと抱えて生きてくんだよ」と言葉をかける。同時にそれは隣にいた平が放った「僕の17才は、もうとっくに終わってる」のアンサーとしても機能している。

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