平手友梨奈のキャリアで重要な一作 『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』で見せた天性の才能

 だが、『ザ・ファブル』で演じる佐羽ヒナコは、心を閉ざした車椅子の少女という現在までの平手のキャリアの中では異質とも言える役だ。自分の人生と向き合い奮闘していくキャラクターとしては『ドラゴン桜』や『風の向こうへ駆け抜けろ』と通ずるものもあるが、最初からハンディキャップを持ったワケありの役柄は『ザ・ファブル』のヒナコだけである。

 そんなヒナコは、序盤の激しいアクションシーンで突如登場する。しかも滂沱の涙を流した状態で。その理由は後に彼女の過去とともに明らかになる重要なワンシーンであり、平手のパブリックイメージとは乖離したインパクトのある登場の仕方と言っていい。どんな相手も6秒以内に仕留める伝説の殺し屋“ファブル”こと佐藤アキラ(岡田准一)との出会いで徐々に自信をつけていくヒナコ。

 『ザ・ファブル』の最大の見せ場は、主演の岡田が自らファイトコレオグラファー(アクションの振付師)として制作の初期段階から参加した迫力のアクションシーンだが、それに匹敵するクライマックスが最終決戦となる森での場面。ある真実を知り、ヒナコは絶叫する。怒りと憎しみ、それらを全て、もう一度人として立ち上がるエネルギーに変えて。特に宇津帆を演じる堤真一とのセリフの掛け合いは、息を呑むような迫力だ。先述したようにソロで経験した映画/ドラマの現場がまだ5本以下とは思えない、天性の才能をまじまじと見せつけられる。そこには『響 -HIBIKI-』、さらに言えば欅坂46時代から観る者を惹きつける平手友梨奈だけが放つオーラ、存在価値がある。

 これから平手は『六本木クラス』、またはそれ以降で控える作品でどのような役を見せてくれるのだろう。この『ザ・ファブル』でのヒナコは、それらをイメージする大事なキャリアの一つである。

■放送情報
『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』
日本テレビ系『金曜ロードショー』にて、6月3日(金)21:00~22:59放送
※放送枠5分拡大
出演:岡田准一、木村文乃、平手友梨奈、安藤政信、黒瀬純、好井まさお、橋本マナミ、宮川大輔、山本美月、佐藤二朗、井之脇海、安田顕、佐藤浩市、堤真一
監督:江口カン
脚本:山浦雅大、江口カン
原作:南勝久『ザ・ファブル』(講談社『ヤンマガKC』刊)
(c)2021「ザ・ファブル殺さない殺し屋」製作委員会

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