『17才の帝国』星野源の圧倒的な独白芝居 平が飲み込まれていた“黒い渦”

 土曜ドラマ『17才の帝国』(NHK総合)がいよいよ最終局面に突入。第4話「理想の世界」は、事前のインタビュー(『17才の帝国』破格のSFドラマはいかにして作られたのか 訓覇圭×佐野亜裕美に聞く)でプロデューサーの佐野亜裕美が予告していたように、どこか「アニメっぽく」、そしてすでに「誰も想像していなかったような結末」へと向かっている。

 17才の総理・真木亜蘭(神尾楓珠)は、総理公邸の地下室で7年前に亡くなった白井雪をAIの「ユキ」として蘇らせていた。第4話では平(星野源)がその地下室、さらにユキの存在に気付くこととなる。先にユキの存在を知り、その姿が自身にそっくりであること、同時に総理補佐官に任命されたのは容姿からだったことを察したサチ(山田杏奈)は、補佐官を辞任することを平に申し出る。かつては真木に憧れ、好意を寄せていたサチが今、彼に抱いているのは嫌悪の感情。鏡に映ったサチの姿が、ユキとして微笑む場面、さらに地下室のコンピューターからユキのデータを盗むためサチが平と連携して真木を足止めする流れなど、これまでよりSF/サスペンス要素がグッと強まった印象だ。

 度肝を抜くのは、閣議室でソロンを相手に交わされる平の独白だ。ウーアの立ち上げ人である鷲田(柄本明)との板挟みにあう平に、真木が「僕は平さんを救いたいです」と手を差し伸べる。その言葉に動揺を隠しきれない平は、真っ暗な閣議室でソロンに「どうして僕はウーアの総理に選ばれなかった?」と問いかける。ウーアからの返答は「あなたは私との対話の間、一度も本当のことを話していませんでした」というもの。星野源自身も5月17日放送の『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)の中で、演じる平を「何考えてるか分からないような役」と話している通りに、その表情からは心情が読み取りにくい人物であったが、まさかそこまで“黒い渦”に飲み込まれていたなんて。

 さらに続くソロンからの「あなたは自身で気づいているはずです。あなたにもあったはずの大切なものをすでに失っていることに」という評価に、平の脳裏には真木からの「17才の時、どんな感じだったんですか?」という言葉がフラッシュバックする。上手く誤魔化したその質問のアンサーは「僕の17才は、もうとっくに終わってる」。心の底に積み重なった鬱憤を、負のエネルギーとして吐き捨てるように。遠くからゆっくりと近づいていくカメラは、最後に死んだ魚の目をした平を映し出す。そこにあるのは、諦め。第2話にて、居酒屋で平が鷲田に漏らした「今の僕に17才は少しまぶしい」の捉え方がまた変わってくる。

 最終話のタイトルは「ソロンの弾劾」。7年前の献金事件の鍵を握る日記、真木にとっての本物のユキ、それぞれの幸福論──。理想の国創りを目指した少年の夢の行方は果たして。

■放送情報
『17才の帝国』
NHK総合にて、毎週土曜22:00〜放送(全5回)
出演:神尾楓珠、山田杏奈、河合優実、望月歩、染谷将太、星野源ほか
作:吉田玲子
制作統括:訓覇圭
プロデューサー:佐野亜裕美
演出:西村武五郎、桑野智宏
写真提供=NHK

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