映像作品への出演ラッシュが続く岸井ゆきの 求められる理由は“想像力を掻き立てる演技”?

 現在放送中の日本テレビ系土曜ドラマ『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』(以下、『パンドラの果実』)で、天才科学者・最上友紀子を演じている女優の岸井ゆきの。天才科学者でありつつも、私生活では寝癖を気にしないような無頓着な部分もあるという独特のキャラを好演している。本作に限らず、近年映画、ドラマなど映像作品への出演ラッシュが続く岸井の魅力に迫る。

 『パンドラの果実』で岸井演じる最上は、これまで画期的な研究をいくつも発表し、業界内でも有名な天才科学者。しかし、ある研究を続けるなか、科学の闇に触れ、現在は科学界から退いているという女性だ。一方で、ディーン・フジオカ演じる警視庁・警視正であり最先端科学技術にまつわる犯罪を専門に取り扱う部署「科学犯罪対策室」の室長・小比類巻祐一を会って間もなく“こっひー”と呼ぶなど、人との距離感にやや常識離れした部分も持つ。

 本作の最上以外にも、3月まで放送されていたドラマ『恋せぬふたり』(2022年/NHK総合)では、恋愛を前提としたコミュニケーションに馴染めず、悶々としているなか、自身がアロマンティック・アセクシャルであるかもしれないと気づく女性・兒玉咲子を、さらに『#家族募集します』(2021年/TBS系)では、6歳の男の子を育てながら、シンガーソングライターを目指すシングルマザーの横瀬めいくを演じるなど、どちらかというとキャラが立った役を演じることが多かった。

 もちろん、ドラマや映画という物語のなかで描かれるキャラクターであるため、大前提として“なんの特徴もない人”であることは少ないのだが、どのキャラクターも、ややもすると現実社会ではリアリティに欠けて感情移入しづらい人物になりかねない。

『ケイコ 目を澄ませて』(c)2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINEMAS

 見方によればやや“ウザキャラ”になりがちな人物を、岸井は非常に良いバランスで演じている。最上は“イヤ”をハッキリ言い、馴れ馴れしさ満点でガサツながら、科学の持つ闇に直面したときに見せる苦悩を、仕草や目線で繊細に表現。普段はぶっ飛んでいるが、こうした岸井の丁寧な表現によって、最上という人物のリアリティが増している。

 同じように『恋せぬふたり』の咲子も、『#家族募集します』のめいくも、ややうるさいなと思わせる部分もあるものの、自分自身と向き合う場面で、岸井がストレートな表現ではなく、奥行きを想像させる芝居をすることで、しっかり視聴者に感情移入させるキャラクターに仕上げていた。

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