『明日』ではオシャレな死神役に キム・ヒソンが体現する唯一無二のヒロイン像

 死神が自殺を食い止めるファンタジードラマ『明日』(Netflixで配信中)。死神は本来、黒い服を着て死期を迎える者の前に現れるのが定番だ。しかしエリート死神たちが働くあの世の企業「走馬灯」には、自ら命を断とうとするものを救う部署がある。それが危機管理チームなのだ。チーム長のク・リョン(キム・ヒソン)は、ピンク色の髪の毛と赤色のアイシャドウにヒョウ柄のジャケット、ホワイトカラーのスーツ、ライダースにジーンズなどの奇抜なファッションスタイルで、黒を基調とする死神とは真逆なのが強烈なインパクトを与えている。

 人気ウェブ漫画を原作としたドラマで、キャラクターをそっくりそのまま再現したのがリョンに扮するキム・ヒソンだ。美貌だけでも圧倒されるが、リョンの役柄のように説得力のある演技でさらに魅了されてしまう。バラエティやラジオ番組では、はつらつと気さくに話す姿が印象的で、エネルギーのある女性だ。女優としてのキャリアは申し分なく、若手俳優たちが口を揃えて言う「共演できるのが光栄だ」とのコメントにも納得の存在である。

 彼女が出演した作品を振り返ってみると『悲しき恋歌』(2005年)がまず思い浮かぶ。盲目の少女を熱演し、キム・ヒソンが持つ美しさと純粋さは胸が締め付けられる悲しいラブストーリーをさらに切なくさせ、何度も涙腺が緩んだ。2000年代の韓国ドラマならではの唯一無二のヒロイン役を演じ切っていたのが記憶に残っている。

 高麗時代に連れていかれてしまう整形外科医に扮したのは『シンイー信義ー』(2012年)。気が強めな自立心の高い役で、これまで演じてきた女性像とはまた違った顔を見せてくれた。『品位のある彼女』(2017年)では財閥家の次男の妻役で、本作で見せたような品位とセンスがある、誰にでも対等な役柄はキム・ヒソンに近いイメージがある。見事にブラックコメディの本作をダブル主演の一人としてけん引していた。『ナインルーム』(2018年)では死刑囚と入れ替わってしまう弁護士役を演じ、最後まで緊張感を切らさずに死刑囚役を務めたベテラン女優のキム・ヘスクとともに作品を盛り上げている。

関連記事