『崖の上のポニョ』の物語のゆくえ 「大人も子どもも楽しめる」の本当の意味は?
ポニョが大荒れする海面を疾走するとき、つまり人間の姿を得て初めて、その脚で宗介のもとへと向かうとき、1番初めに、宗介本人よりも先に、その不可解な現象を目の当たりにする人物がいる。海の生き物として生を享けたポニョが陸地にあがろうと、自然生命の掟を覆そうとする瞬間の、乱れ狂った海のエネルギーに飲み込まれそうになっている彼が、人間ポニョの第一目撃者であることは、むしろ彼の方がこのまま陸地に戻って来れないのかもしれないという不吉な予兆めいた出来事である。そして彼はぱたりと物語から退場する。果たしてそのまま現れないのだろうか。
『崖の上のポニョ』の物語のゆくえとは、人間になりたがったさかなの子ポニョの運命でありながら、第一の目撃者の不在と、その帰りを待ち続けた結末でもあるのだ。この作品をすでに観たことがあったとしても、紡がれていく物語がいかに重層的であるか、さらに、ジブリ特有の物質描写がどのような効果を発揮しているかを踏まえてもう一度観ると、きっと新しい発見があるに違いない。
■放送情報
『崖の上のポニョ』
日本テレビ系にて、5月6日(金)21:00〜23:09放送
※放送枠15分拡大 ※ノーカット放送
原作・脚本・監督:宮崎駿
音楽:久石譲
声の出演:奈良柚莉愛、土井洋輝、山口智子、長嶋一茂、天海祐希、所ジョージ
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