『ちむどんどん』トラブルメーカー賢秀の一攫千金の夢は…… 光る竜星涼の豊かな表情変化

 『ちむどんどん』(NHK総合)第18話では、歌子(上白石萌歌)の才能を見抜いた音楽教師の下地響子(片桐はいり)がとうとう比嘉家に押しかけてきた。初登場時から片桐の存在感の濃さはSNS上で話題になっている。そんな片桐演じる響子が熱のこもった声で「歌子さんの歌は人の心を打つ!」「私は聞きたい! 彼女の魂の叫び!」と思いを伝え、片桐のその迫力から、彼女の強い願望が素直に胸に響く。歌子自身も「困ってるのは確かだけど、あの先生、嫌いじゃないわけ」と口にした。強烈にシャイな歌子と思いが強いゆえにやや強引な響子が、大好きな音楽という共通点を介して今後どのような化学反応を起こすのか楽しみだ。

 第18回は、暢子(黒島結菜)の兄・賢秀(竜星涼)の豊かな表情変化も魅力的な回となった。家族のために一攫千金を夢見てチャンスを探していた賢秀だが、彼が妹たちに話した「我ら比嘉家が一気にお金持ちになれる話」はどう考えても騙されているとしか思えない内容だ。そんな上手い話があるものかと大半の視聴者が感じたと思うのだが、驚くことに、実業家・我那覇良昭(田久保宗稔)の話を真剣に聞き入る賢秀の目には疑念が微塵もない。竜星はこの場面でありとあらゆる表情を見せる。妹たちに語るとき、その姿は意気揚々としていて誇らしげだ。一方、我那覇の話を聞く賢秀は、首をつきだし、鼻の下が伸び、しまりのない表情をしている。預けるお金を一口1万ドルから1,000ドルにしてもらったときなど、まゆげも垂れ下がり、言ってしまえばかなり間抜けな表情だ。我那覇の儲け話の虜になっているのがはっきりとうかがえる。我那覇の言葉に「アキサミヨー!」と目をまん丸くして驚く竜星の力強すぎる表情には思わず笑ってしまう。

 朝ドラにはトラブルメーカーが度々登場する。トラブルメーカーといえば、『スカーレット』(NHK総合)の常治(北村一輝)や『おちょやん』(NHK総合)のテルヲ(トータス松本)などの“ダメ父”が思い浮かぶが、前作『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)で濱田岳が演じていた主人公・安子(上白石萌音)の兄・算太同様、今作は“ダメ兄”がトラブルメーカーだ。

 とはいえ、竜星演じる賢秀は、母・優子(仲間由紀恵)が、ニーニーに頼まれたらすぐに言うことを聞いてしまうのも納得のまっすぐさも併せ持つ。優子に「一生に一度の頼みがある!」という賢秀の表情は、事情を知っている視聴者から見れば情けなくも見えるだろうが真剣そのもの。そもそも彼は、家族を思って行動しているのだ。結果的に迷惑をかけることが多いという少し残念な役回りではあるけれど、賢秀の憎めなさは家族思いな性格にあると感じる。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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