1人の青年が語る難民としての過酷な経験と未来への覚悟 『FLEE フリー』日本版予告編
6月10日に全国公開されるヨナス・ポヘール・ラスムセン監督のドキュメンタリー映画『FLEE フリー』の日本版予告編が公開された。
アフガニスタンで生まれ育ったアミンは幼いある日、父がタリバンに連行されたまま戻らず、残った家族とともに命がけで祖国を脱出した。やがて家族とも離れ離れになり、数年後たった一人でデンマークへと亡命した彼は、30代半ばとなり研究者として成功を収め、恋人の男性と結婚を果たそうとしていた。だが、彼には恋人にも話していない、20年以上も抱え続けていた秘密があった。あまりに壮絶で過酷な半生を、親友である映画監督の前で、彼は静かに語り始める。
本作は、主人公アミンをはじめ周辺の人々の安全を守るためにアニメーションで制作された。タリバンとアフガニスタンの現実や、祖国から逃れて生き延びるために奮闘する人々の過酷な日々、そして、居場所を奪われることがいかに人間の尊厳を傷つけるのかが描かれる。そんな本作は、第94回アカデミー賞にて、史上初となる国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門同時ノミネートを果たした。
公開された予告編では、主人公アミンが誰にも明かしたことのなかった自身の過去を、長年の親友である映画監督に対して初めて語り始める様子や、その言葉により回想される幼少期からの過酷な経験、結婚を控えた恋人の男性にさえ過去を話すことができていないという現在の苦悩が捉えられている。一方で、アミンによる「変わるべき時だ」「これが僕の物語の始まりだ」という自身のトラウマと向き合った上で一歩踏み出そうとする、強い覚悟の言葉も切り取られた。
映像には、本作を絶賛する歴代のアカデミー賞監督たちによるコメントも収録。アルフォンソ・キュアロン監督は、「人を立ち止まらせ、考えさせる。この映画は愛で出来ているのだ」とコメントを寄せており、ポン・ジュノ監督は、「今年見た映画の中で、最も感動した作品。涙が出た」と絶賛し、2021年のベスト映画の1本にも選出している。
なお、アミンがデンマークに亡命を果たした直後の16歳の頃からの旧友だったラスムセン監督は、若い頃、好奇心からアミンに過去について尋ねたが、アミンは何も語ろうとしなかったという。それから約20年の時を経て、アミンの心境の変化もあり、本作の製作に同意。ラスムセン監督は、アミン本人の声と記憶を通してこれまで誰にも語られなかった彼の物語を聞きたいと考え、その心のペースに寄り添いながら約4年もの長い時間をかけて断続的にインタビューを敢行した。
ラスムセン監督は、本作の撮影方法を「ラジオ・ドキュメンタリー制作で長年培ってきたインタビューの手法を用いました。取材対象に、横たわって目を閉じ、かつて目にした光景や匂い、感触を思い出してもらいます。そうすることで、記憶がより強く直接的なものになり、まるで今まさに展開していることのように感じられるのです」と説明する。また、“初めて話す”という行為が持つエネルギーを重視し、事前に聞いた内容を改めて語ってもらう“再現”は一切行っていないと語った。
■公開情報
『FLEE フリー』
6月10日(金)全国ロードショー
監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン
脚本:ヨナス・ポヘール・ラスムセン、アミン・ナワビ
製作プロダクション:Final Cut for Real
製作総指揮:リズ・アーメッド、ニコライ・コスター=ワルドー
配給:トランスフォーマー
2021年/デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フランス合作/シネスコ/カラー/89分/5.1ch/G
(c)Final Cut for Real ApS, Sun Creature Studio, Vivement Lundi!, Mostfilm, Mer Film ARTE France, Copenhagen Film Fund, Ryot Films, Vice Studios, VPRO 2021 All rights reserved
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/flee/
公式Twitter:@FLEE_JP