『鎌倉殿の13人』佐藤浩市、最も頼りになる者の切ない最期 「頼朝嫌い」がトレンド入り
読み書きができなかった広常は、頼朝が京に上ったときのために必死で読み書きの勉強をしていた。文字を綴ることに没頭する広常を佐藤は真剣な表情で演じている。這いつくばって書く姿勢から、不器用さと懸命さが伝わってくる。熱中する子どものように輝く佐藤の目が心に残る。広常が手を墨だらけにして書いたのは「明神様のための田んぼを作る。社も作る。流鏑馬を幾たびもやる。これ全て鎌倉殿の大願成就と東国の太平のため」。上総広常は、誰よりも鎌倉殿を愛し、誰よりも平和を望んでいた。
頼朝を演じる大泉洋の演技も強く心に残る。広常を謀反に加担させる策を企てた頼朝は、淡々と「上総介は言った。御家人は使い捨ての駒と。やつも本望であろう」と言った。広常に駆け寄ろうとする義時への「来ればお前も斬る」という冷ややかな声色。若くして流罪となり、孤独な日々を送ったことから、頼朝は誰のことも心の底から信じられないのだと考える。だからこそ、頼朝は時に恐ろしい行動に出る。しかしそれは、彼の孤独を際立たせるばかりである。その冷酷さは、放送後にTwitterで「頼朝嫌い」がトレンド入りするほどだ。
物語の終わり、頼朝はまるで自分に言い聞かせるように「あれ(広常)は謀反人じゃ」と寂しそうな声で言った。広常が綴った文章から自分への忠義心を知り、心を痛めたのだと信じたい。
■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK