『鎌倉殿の13人』市川染五郎、美しさと強さを兼ね備えた風格 “蝉の抜け殻”がトレンドに

 義経は義仲討伐のために出立する前に、義高が好きだと話していた蝉の抜け殻を義高に手渡した。このときの、義経の背中を見送る染五郎が“残念がる”ような表情をしていたのが気になっていたのだが、その理由はすぐに明かされた。義高は義時に「九郎殿(義経)が不憫でなりません」と言った。

「父に戦でかなうわけがありませぬ。もはや再びお会いすることもないでしょう」

 義経を見送るときに見せた顔つきは、父・義仲に討たれる義経を哀れむものだったのだ。

 その後、映し出された染五郎の顔は、源氏同士が争うことへの苦しさや、父・義仲の強さを信じているとはいえ、父の身を案じているようにも見えたのだが、何かを堪えるように微かに力のこもった表情と蝉の抜け殻を握りつぶす行為から、頼朝勢への憎しみの芽生えも感じられる。

 大姫や坂東武者たちから慕われる優しさと礼儀正しさ、木曽源氏としての誇り高さ、そして頼朝勢への敵意の芽生え。1話分のわずかな時間の中で、義高のさまざまな人物像が描き出された第14回。落ち着いた佇まいながらも凛とした強さを感じさせる染五郎の演技が魅力的な回となった。

 物語もきな臭さを増している。先陣の大将が義経に決まったとき、比企能員(佐藤二朗)に推薦されていた梶原景時(中村獅童)が頼朝を鋭い眼光で見つめる。何か思うところがあるような景時の表情には不穏さを感じた。義仲を討ちに行く前の義経が義高をじっと見つめたときも、義経の本心を読み取ることができなかったが、本作は腹の底が見えない登場人物ばかりである。二つに割れた御家人と頼朝がどのようにして一つにまとまるのか、次回が楽しみだ。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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