『鎌倉殿の13人』青木崇高の木曽義仲、頼朝と正反対の魅力 2組の幼なじみの絆が光る回に
義時は土産を手に、再び八重を訪れる。義時もまた、八重への想いを貫き通す。小栗演じる義時には、青木演じる義仲や秋元演じる巴御前のような凛々しさはないし、新垣演じる八重のように気丈夫な雰囲気もない。けれど、八重が誰を慕おうと彼女の幸せを願う、そんな優しくあたたかな意志はずっと曲げずにいる。
「あなたはやっぱり伊豆の景色がよく似合う。伊東の館にアジサイを届けたあの日から、ずっとそう思っておりました」
この義時の一途さが、八重の心に染み入った。八重は立ち去ろうとする義時を呼び止めると、いつか義時が言った想いを叶えるように微笑みながらこう言った。
「お帰りなさいませ」
八重は千鶴丸(太田恵晴)を亡くし、家人であり夫の江間次郎(芹澤興人)は身を挺して八重を守り殺された。父・祐親(浅野和之)と兄・祐清(竹財輝之助)も亡くした。大切な家族を奪われ、険しい顔つきを見せていた八重が久しぶりに見せた穏やかな笑顔だった。八重の言葉に、感極まった義時は思わずすすり泣いた。戸惑いながらも優しい笑顔で応えた小栗と、そんな彼を見て安堵したように笑う新垣の表情から、彼らの心が通じたことがわかった。
鎌倉殿とは異なる源氏の棟梁・義仲と巴御前。色恋よりも深い2人の関係が八重を一途に想う義時の心に刺さり、そんな義時の想いが八重の心を動かす。第13回「幼なじみの絆」は、敵味方の腹の探り合いや無慈悲な出来事にハラハラさせられる本作において、比較的心穏やかな回だった。登場人物同士の深い絆も、本作の魅力の一つである。
■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK