香川照之と野村萬斎の演技合戦 『七つの会議』は『半沢直樹』チームのひとつの集大成に

 対して福澤克雄が監督した映画版『七つの会議』は、画面の印象が明るく人間ドラマに寄せた作りとなっている。

 大きく違うのは役者の見せ方だろう。ケレン味たっぷりの演技が「これでもか」と披露される。『半沢直樹』が大ヒットした最大の理由も、喜怒哀楽の表情が強調された役者の芝居だった。

 『半沢直樹』は、香川照之、片岡愛之助といった歌舞伎出身の俳優が多かったこともあってか“半沢歌舞伎”と言われることも多いのだが、歌舞伎の他にも落語家、お笑い芸人、スポーツ選手、アナウンサー、ミュージシャンといった他ジャンルで活躍する人々を縦横無尽にキャスティングすることで、福澤克雄は独自のテンションを映像の中に刻印する。今回はキーパーソンとなる八角に狂言師の野村萬斎が抜擢されているのだが、発声の仕方や所作が独特で、それが謎の万年係長として暗躍する八角のトリックスター性と見事に合致している。『半沢直樹』以降、日曜劇場では欠かせない存在となっている香川照之と野村の演技合戦は、剣豪同士の対決のようで、本作最大のみどころだ。

 その意味で『七つの会議』もまた、会社を舞台にした時代劇と言える。

 同時に、これまで日曜劇場で作られてきた池井戸潤ドラマが「何を描こうとしてきたのか」を、作り手自身がはっきりと告白した映画にも感じられた。

 「日本人にとって会社とは何か?」と問いかけてきた福澤克雄監督による池井戸潤作品が2019年に到達した、ひとつの集大成である。

参照

※ https://dot.asahi.com/wa/2013092000028.html?page=1

■放送情報
『七つの会議』
TBS系にて、4月3日(火)21:00~放送
出演:野村萬斎、香川照之、及川光博、片岡愛之助、音尾琢真、藤森慎吾、朝倉あき、岡田浩暉、木下ほうか、吉田羊、土屋太鳳、小泉孝太郎、溝端淳平、春風亭昇太、立川談春、勝村政信、世良公則、鹿賀丈史、橋爪功、北大路欣也
原作:池井戸潤『七つの会議』(集英社文庫刊)
監督:福澤克雄
脚本:丑尾健太郎、李正美
(c)2019映画「七つの会議」製作委員会
番組公式サイト:https://www.tbs.co.jp/program/nanakai_20210330/
映画公式サイト:http://nanakai-movie.jp/index.html 
映画公式Twitter:@nanakai_movie

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