現代人の感情を体現する森永悠希 『逃亡医F』『ミステリ』などに引っ張りだこのワケ
そして国内外で大きな注目を集めた2020年の『今際の国のアリス』では、山崎賢人演じる主人公アリスの親友・チョータ役を務めた。母親が宗教にハマっていたことから、自身もトラウマを抱える臆病な人物を演じている。突然異世界に転移され、デスゲームに強制的に参加させられる登場人物の1人として、やはりこちらも思い悩む役柄であり、視聴者が感情移入できる演技を見せている。
現在放送中の『ミステリと言う勿れ』と『逃亡医F』では、どちらも犯罪を犯し、それがいつバレるか心配でオドオドしている気弱な役柄を演じていた。『ミステリと言う勿れ』は、妹を殺した犯人を探すバスジャック犯に囚われた乗客の1人で、ミスリードを誘うような役柄だった。『逃亡医F』では主人公の藤木(成田凌)にカージャックされた運転手の1人を演じたが、実は自身も犬を盗んで人に追われている身だった。そして最後は自分たちよりも犬の命を大事にするという、結局は悪人になりきれない人物を演じた。どちらの演技も、徐々に心が追い詰められていく演技が絶妙。正直黙っていればやり過ごせるのに、いたたまれなくなって自らカミングアウトしてしまうという、人間の弱さをしっかりと見せていく。こうした言葉と感情をコントロールする演技と、柔らかい人柄がミステリー作品でも遺憾無く発揮され、視聴者に深読みさせていく役割を担っているのだ。
しかし、彼が演じるのは単純にネガティブで気弱な人ではない。相手に心を開かないのに、自分は仲間に加わりたいというこじらせた部分や、秘密やトラウマを抱え、それに耐えきれず押しつぶされそうな人など、現代人特有の悲観的な姿勢を持つキャラクターが多い。そして現実も、楽観的な人よりそんなふうに素直になれない感情を抱く人が大半であるはず。良くも悪くも視聴者が感情移入しやすい人物を、森永は巧みに演じているのだ。それが、彼が今の時代の役者として引っ張りだこの理由だと考える。
ただ、キャリアのある森永は決してネガティブな役だけなく、2015年の『釣りバカ日誌 Season2 ~新米社員 浜崎伝助~』(テレビ東京系)で見せたマイペースな御曹司や、2019年の『トクサツガガガ』(NHK)で演じた、無意識に相手にずけずけと干渉してくる非常識な役、『ボイス 110緊急指令室』(日本テレビ系)の、学校の先生と違法動画をアップロードして金を稼ぐ、二面性を持った悪役など、様々な役を演じてきた。そして、どれも物語にハマる印象深い演技を見せている。
「自分がその作品にとって、どういう『装置』であればいいか」という役者としてのこだわりがあり、作品における自身の立ち位置を確認しながら、演じるキャラクター組み立てていくのだと、森永はラジオ番組で語っている。演技力だけでなく、役に対する追求心もあることから、彼が長年役者として活躍してきたのも頷ける。
『KAPPEI』では警察官役を演じている森永。変人ばかりが登場するこの作品では、観客目線のツッコミ役として、これまでとはまた違った顔を見せると予想される。バディを組むベテラン警官役の橋本じゅんも現在引っ張りだこの曲者俳優なだけに、どんな掛け合いを見せてくれるのか楽しみだ。
■放送情報
『ミステリと言う勿れ』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:菅田将暉、伊藤沙莉、尾上松也、門脇麦、白石麻衣、鈴木浩介、筒井道隆、永山瑛太ほか
原作:『ミステリと言う勿れ』 田村由美(小学館『月刊フラワーズ』連載中)
脚本:相沢友子
プロデュース:草ヶ谷大輔、熊谷理恵
演出:松山博昭、品田俊介、相沢秀幸、阿部博行
制作・著作:フジテレビ 第一制作部
(c)田村由美/小学館 (c)フジテレビジョン
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