『片想い』『さまよう刃』など サスペンス好きにおすすめの東野圭吾原作ドラマ6選
かれこれ20年近くもの間、ほぼ毎年のように著作が映画化され、かつては他のミステリ作家同様いわゆる2時間ドラマが中心だったテレビドラマ化も、『白夜行』(TBS系)や『ガリレオ』(フジテレビ系)などの成功を契機に、頻繁に連続ドラマとして制作されるようになる。もはや東野圭吾は21世紀の映画界・ドラマ界において極めて重要なストーリーテラーであることは何の疑いようもなく、しかもそれは日本だけに留まらずアジア圏などに確かな拡がりをみせている。
もっとも、それだけ数多く映像化されているとあれば、基本的なプロットを活かしたのみで大きな脚色が施されている作品も珍しくない。それは2時間程度の映画や3カ月1クールの連続ドラマにはよくあることで、とりわけ東野作品のように長すぎず短すぎず、それでいて登場人物も情報量もそれなりに多い小説とあれば尚更だ。そういった意味では他の作家の作品でも証明されているように、比較的自由な放映話数で適切な長さを作り出せる、WOWOWの「連続ドラマW」枠との親和性は殊更に高い。
現に、2004年に単発で放送された『ドラマW 宿命』を除いても、2010年に放送された深田恭子主演の『連続ドラマW 東野圭吾「幻夜」』、2012年に放送された長澤まさみ主演の『連続ドラマW 東野圭吾「分身」』、2016年に放送された土屋太鳳主演の『連続ドラマW 東野圭吾「カッコウの卵は誰のもの」』など、現時点まで7作の連続ドラマが同枠で制作されているのである。興味深いことに、そのどれもがタイトルに作家名が付けられており、まるで“東野圭吾”という名前はブランドとして、ひいてはある種のジャンルとして成立するのかとさえ思えてしまう。仮に後者であるとすれば、それはミステリーないしはサスペンスをベースに、登場人物たちの悲劇的なドラマが背景に潜んでいるというコンストラクションが特徴といったところか。
さながら海外ドラマにおける“リミテッドシリーズ”にも近いカラーを持ち合わせた「連続ドラマW」。連続ドラマとして総じた放送時間の長さも適していれば、ある程度の情緒を持たせたミステリーというジャンル性も非常に適しているといえよう。例えばこれが『ガリレオ』や『新参者』(TBS系)のようにいくつもの事件を切り取っていくシリーズ作品であればあまり向かないが、ひとつの事件から枝葉のように複数の登場人物のドラマが拡がっていく上では過不足なく、また決して蛇足にもならないわけだ。東野作品が持ち合わせているドラマ性の高さを裏付ける“群像性”が、原作小説に限りなく近いかたちで残すことができてはじめて、理想的な映像化が可能になるわけだ。