『真犯人フラグ』は芳根京子のもの 主演に加え“3番手”でも輝き放つ役者に進化

 『真犯人フラグ』(日本テレビ系)の公式サイトで毎週投票が行われている「一番怪しいのは誰!? #みんなの真犯人フラグ」なる企画で、これまで21回のうち1位を8回獲得しているのが芳根京子演じる二宮瑞穂だ。

 ちなみに2位も8回、3位が1回、4位と5位を2回ずつと、すべての回で5位以内をキープしているのは瑞穂と一星(佐野勇斗)の2人だけ。年末ごろには5週連続で1位をキープし、年明けからは5位に転落しては2位に盛り返してを繰り返し、3月4日に発表された前回でおよそ10週間ぶりに首位に返り咲く。まさに視聴者の推理欲求を刺激する、このドラマのテーマにぴったりの重要キャラであり続けているわけだ。

 久々に首位に返り咲いた投票の直前の放送回、第18話のラストでは行方知れずの真帆(宮沢りえ)と何年も前から接点があったことがわかる。そして先日放送された第19話では、林(深水元基)とすでに亡くなっている瑞穂の姉がかつて婚約していたことが明かされ、なにやら事件の核心に迫りそうな小説を書いてSNSに投稿。そして瑞穂について調査を進めていた河村(田中哲司)と対峙するところで最終話へと持ち越される。放送直後のコラム(参考:『真犯人フラグ』最も怪しく映る日野(迫田孝也) 明らかになった3つの真相と残された謎)でも触れた通り、これまでのこのドラマの“フラグ立て”の傾向を踏まえれば、このまま瑞穂が真犯人である可能性は低く思えるが果たしてどうか。

 その瑞穂役を演じる芳根といえば、筆者はこれまで彼女の出世作である『表参道高校合唱部!』(TBS系)でそのパフォーマンス力の高さに魅せられて以来、出演作をすべて追いかけ、このリアルサウンド映画部だけでも芳根に関するコラムを20以上書いているわけで。しかし前回書いたのは2020年1月の『チャンネルはそのまま!』(HTB)が最後で、そこから2年も間隔が空いてしまった(参考:『チャンネルはそのまま!』が傑作になった理由 芳根京子キャリア最高の好演がもたらすユニークさ)。現代では比較的稀有な、本当の意味で“コメディができる女優”としての本領が発揮された同作の抜群の演技にかなり満足してしまった部分は大きいのだが、それでもこの2年間の出演作は、芳根京子という女優の新たな転換期として注目すべき作品が並んでいる。

 まず挙げるべきは2020年の1月期に放送された『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京ほか)であろう。ここでは古舘寛治と滝藤賢一演じる“レンタル兄弟おやじ”の古滝兄弟が通う喫茶店の看板娘・さっちゃん役。実は2人の腹違いの妹であるという設定で、第11話でレズビアンであることがわかる。そして最終話では岐阜にある実家の旅館を手伝うために東京を離れ、古滝兄弟と闇鍋を囲む(古滝家を訪れてさるぼぼを手にするシーンがすごく良い)というユニークなエピソードと、晴れやかなクライマックスが待ち受けていた。いわゆるヒロイン格であるわけだが、明確に主演2人を立てる一歩引いた助演ポジションのヒロインという点で、これまでの役柄とは差異化が図られているように見える。

 演技の大きさが持ち味なだけに主演格、ないしは主演とほぼ同等のヒロイン格。もしくは完全に抑えめの演技に徹して4~5番手以下の役柄が中心だった彼女が、ブレることない3番手で“持っていくところは持っていく”助演としての新たなスキルを得たのである。それは2021年4月期の『コントが始まる』(日本テレビ系)でも同様だ。菅田将暉、神木隆之介、仲野太賀が演じるお笑いトリオと、有村架純と古川琴音の姉妹を主演格にした同作で演じたのは、仲野演じる潤平の恋人である奈津美役。時に“第3のヒロイン”として彼ら5人と同じ空間に入りながらも、一歩引いた位置に立ってこのドラマの群像劇を下支えしていく。

 『コントが始まる』と同じクールにはNHKドラマ『半径5メートル』で主演を張る。ここでは週刊誌の芸能面の記者から生活情報を扱う班に移動を命じられた若手編集者を演じたわけだが、これまでの芳根主演作で見られたような圧倒的なポテンシャルで周囲をぐいぐいと引っ張って鼓舞するような座長ぶりからは一転。先輩記者である永作博美をはじめとした周囲の登場人物のキャラクター性を引き立てる、抑制を巧みにきかせた大人びた座長ぶりを見せてくれるのである。

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