生田絵梨花が飛び込んだ“松尾スズキの世界” 「信じていくことが一番の化学反応」

 松尾スズキが脚本・演出を手がけるオリジナルコントドラマの第2弾『松尾スズキと30分の女優2』が、WOWOWプライム・WOWOWオンデマンドで放送・配信を開始した。松尾が毎回1人の女性俳優を主演に迎え、30分のコントを作り上げるこのシリーズに今回、生田絵梨花がラインナップされている。

 松尾の代表作ともいえる舞台『キレイ―神様と待ち合わせした女―』(以下、『キレイ』)の2019〜2020年公演で主人公ケガレを務めた経験をもつ生田は今回、自身のミュージカルでのキャリアも効果的に活かしながら、コントの世界に見事に適応している。その生田に、本作をはじめ松尾スズキ作品の魅力や制作の様子、また自身の演者としてのスタンスまで話を聞いた。(香月孝史)

松尾スズキの信じさせる説得力

――これまで、生田さんと松尾スズキさんとは、基本的に俳優と演出家という立場で関わってこられました。今回、『松尾スズキと30分の女優2』ではW主演のようなスタイルで、俳優同士としても対峙します。

生田絵梨花(以下、生田):それこそ、今までは演出家の松尾さんとしか接したことがなかったので、一緒にお芝居ができる場をいただけるのは、とても嬉しかったですね。

――俳優としての松尾さんにはどんな印象を持ちましたか?

生田:今までは、穏やかで優しい印象の松尾さんしか見てこなかったんですけど、こんなにたくさん違う一面があるんだと思うくらい、面白いし振り切ってる。あと、そのシチュエーションを信じさせる説得力みたいなものがあるんです。

――見ていると変なことばかりしているはずなのに、そのシチュエーションを信じさせてしまう力というのは面白いですね。

生田:そうですね。今回は一緒に演じさせていただけて、すごく刺激を受けましたし、やっていてすごく楽しかったです。

――『松尾スズキと30分の女優2』では歌番組の体裁で、ミュージカルをモチーフにした演目も登場します。この作品は生田さんのキャリアがあるからこそ面白いものになっていると感じますが、どのように演じられましたか?

生田:でも、なるべく普段ミュージカルに取り組んだり、音楽番組で歌わせていただくのと変わらないスタンスで臨みましたね。

――生田さんが真面目に上手く歌えば歌うほど、面白くなっていきますよね。歌唱についてはどのような演出があったのでしょう?

生田:普通にミュージカル現場の歌唱指導みたいな感じでした。「この言葉はちょっと立ててほしい」「ここはちょっと印象的に呟いてほしい」とか。だから、おかしなことをやっているはずなのに、みんな至って真剣で。ステージングもちゃんと別日にリハーサルをしてますし、セットも照明も衣装も本格的ですし。やっている中身以外は本当に全部豪華で。常に真面目に撮ってるんだけど、でもやっぱりふと我に返る瞬間というのはあって、笑ってしまうことはたくさんありました(笑)。

こんなに笑うことになるとは

――全編を通じて、生田さんが真顔でやりきることで面白くなっているように思います。生田さん自身、こうしたコントやコメディへの適性はどう考えていますか?

生田:いや、適性は本当にわからないんですけど……。そうですね、(少し考えてから)今回の撮影では目的は笑わせようっていうことじゃなくて、その世界観の中で懸命に生きるということを意識していました。

――その世界観の中で生きている最中、外からどう見えているだろうかみたいなことは?

生田:撮影中は全く分からないです(笑)。それこそ、何やってんだろう? という瞬間もあったんですけど。でも後で出来上がったものを見させてもらうと、面白くて笑ってしまいました(笑)。だから、自分の出ている作品でこんなに笑うことになるとは、撮影中は想像がつかなかったです。

――それこそ台本として読んだら、この人たち何を言っているんだろう? という感じなんじゃないかと想像します(笑)。

生田:最初、台本を読んでも全然分かりませんでした(笑)。最初は全然知らない方々の歌唱から始まりますし(笑)。喋ってる内容も、「何の話?」って感じなんですけど、出来上がった映像を見るとそれが面白くて笑ってしまうというか。

――それでも台本には自然に対応していけるものですか?

生田:書いてあること自体はわからないけれど、たとえば最初のコント「WOWOW 輝け!音楽祭」は、私が歌番組で実際に経験してきたことをイメージしながら、テンションを作っていました。

――台本上の台詞について、松尾さんから説明はないんですね?

生田:ないですね(笑)。これは『キレイ』の稽古中に、猫背(椿)さんがおっしゃっていたんですけど、「私たちもね、どういうことですか? って訊いたことがない」って(笑)。それを聞いて、なるほど! と思って。だからもう、松尾さんのその世界を信じていくことが、一番の化学反応になっていくのかなって思っています。

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