コロナ禍でも根強い恋愛映画のニーズ 『余命10年』にロングヒットの予兆

『余命10年』にロングヒットの予兆

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 先週末の動員ランキングは、『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』が土日2日間で動員32万2000人、興収3億9400万円をあげて初登場1位となった。初日から3日間の累計では動員35万9184人、興収4億4077万3000円 。『映画ドラえもん』シリーズは新型コロナウイルスのパンデミックに入って以降、2020年3月6日公開予定だった前作『映画ドラえもん のび太の新恐竜』が約半年の公開延期を経て同年の8月7日に公開。そして、2021年3月5日公開予定だった今作が約1年の公開延期を経てようやく今回公開と、3年越しで大きな影響を受けてきた。

 コロナ禍に入る前の今のところ最後のシリーズ作品は2019年3月公開の『映画ドラえもん のび太の月面探査記』(最終興収50.2億円)となるわけだが、同作の公開初週の土日2日間の興収は6億9600万円。前作『映画ドラえもん のび太の新恐竜』(最終興収33.5億円)の公開初週の土日2日間の興収は4億1300万円。『映画ドラえもん のび太の月面探査記』との興収比でいうと前作が59%、今作が57%と、シリーズの「下降傾向」と「下げ止まり傾向」の両方が指摘可能だ。いずれにせよ、ファミリー層の比率の高い作品に関してはまだパンデミックの影響は根強く残っているので、現状のフランチャイズの価値を判断するのは平常に戻るであろう(と心底願いたい)来年の次作が公開されるまで待つべきだろう。

 コロナ禍の影響を早い段階で脱した若年層の観客をターゲットにした作品と言える、小松菜奈と坂口健太郎の共演作『余命10年』は、土日2日間に動員16万2000人、興収2億2100万円をあげて先週末の動員ランキングで初登場2位となった。初日から3日間の累計では動員22万8018人、興収3億668万5070円。パンデミックに入ってから公開された近いジャンルの作品として比較できそうなのは、同じメジャー系配給、同じ小松菜奈主演(菅田将暉との共演)でスマッシュヒットを記録した2020年8月公開の『糸』だろう。同作の公開初週の土日2日間の興収は2億3400万。ヒットの規模も今のところかなり近い。

 『糸』に関して注目すべきは、パンデミックによる公開延期を経て、まだその影響があった時期に公開された作品でありながらロングヒットを記録して、最終興収22.7億円まで積み上げて2020年の年間興収6位(実写日本映画では4位)になったことだ。一時期まで隆盛だったコミック原作やラノベ原作のいわゆるティーンムービーは、邦画最大手の東宝のラインナップからもすっかり消えて、作品の規模も興行の規模も縮小し続けているが、その一方でシリアスでベタな恋愛(悲恋)映画には根強いニーズがあることを『糸』は証明した。そういう点でも、『余命10年』は今後の推移にも大いに期待ができるのではないだろうか。

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