「恐怖の村」シリーズで最も危険? 清水崇監督が『牛首村』で回帰した正統的なホラー表現

『牛首村』の正統的なホラー表現

 「牛の首」なる題名の、おそろしい怪談があり、それを聞いた者は皆間もなく死んでしまうという。しかし、その内容を知りたいと思っても、誰も知る者がいない。なぜなら、聞いた者は死んでしまうからだ。結局分かっているのは、“「牛の首」なる、おそろしい怪談がある”という噂だけである。

 おそらく、怪談「牛の首」には実体がなく、そのような怪談があるという噂自体が、「牛の首」の怪談の内容そのものなのだろう。清水崇監督による「恐怖の村」シリーズ第3弾『牛首村』は、そんな実体不明の「牛の首」の先を描く作品である。

 その斬新な恐怖演出で、ハリウッドでもブームを起こすほどの快挙を成し遂げた『呪怨』シリーズを生んだ清水崇監督が、いま連続して手がけている「恐怖の村」シリーズは、主に日本国内の観客をターゲットに、いくつかの怪談や都市伝説、実在する心霊スポットなどを複合した、地域性や話題性のあるホラー表現を目指したものだ。その狙いは、いまの清水監督としては比較的ドメスティックだと感じられるものの、怪談、都市伝説を好む若年層をも取り込み、国内で幅広く人気を獲得することとなった。みんな、わりとこの種の作品が好きなのだ。

牛首村

 本作『牛首村』もまた、シリーズの作法に則って、「牛の首」の怪談にくわえ、富山県の「牛首トンネル」、同じく富山県の“最恐スポット”と言われる廃旅館「坪野鉱泉」、閉鎖的な村の風習が引き起こす悲劇など、複数の恐怖要素がミックスされたものとなった。

 主人公は、東京に住む女子高校生の奏音(かのん)。ある日彼女は、友人に自分と生き写しのようにそっくりの少女が映っている動画を見せられる。その少女がいた場所は、富山県の心霊スポット「坪野鉱泉」だった。そこで彼女は、神隠しのごとく姿を消してしまったのだという。奏音は、自分に似た少女へのおぼろげな記憶や、身の回りで怪異が起きたことで、その真相をつかむために富山へと旅をすることとなる。そこで奏音は、かつておそろしい風習を行っていた「牛首村」の存在を知ることとなる。

牛首村

 主人公の奏音と、もう一人の少女を演じているのは、木村拓哉と工藤静香の次女であり、ファッションモデルとして活躍するKoki,だ。俳優を紹介するのに、両親の名前を出すのは気が引けるが、これまでのキャリアで、そういったアドバンテージを利用してきた事実は否めず、映画初出演となった彼女が、まずそういった点で注目されてしまうのは仕方がないことではあるだろう。だが、話題性とは別に、Koki,は本作でモデルとしてのビジュアル的な存在感を示しながら、かつ自然な演技でニつの役をこなしている。新人俳優を育てる役割もある「ホラー」ジャンルでは、それほど演技力を必要としない場合も少なくないが、今回Koki,は、日本の怪談における湿っぽい雰囲気とは異なる印象を残しながらも、求められるハードル以上のパフォーマンスを見せたといえるのではないか。

 ストーリーの点で一つ気になるのは、「坪野鉱泉」は実際に二人の少女が失踪したとされ、「神隠しのようだ」と言われた、いわくのある場所だということだ。その事件は、最終的に「坪野鉱泉」とは異なる場所で、二人が遺体となって発見されるという悲劇に終わり、いまではこの心霊スポットとは関係のない事故であったと考えられている。とはいえ、「坪野鉱泉」で少女が姿を消すという設定は、その実際の出来事を知っている者にとって、どうしても連想してしまうことは否めないだろう。

 もちろん製作者たちは、実際の事故との関連を認めることはないだろうが、週刊誌やTV報道で騒がれた一連の出来事は有名なため、これが念頭にあったのではと指摘されても仕方がない部分がある。なので、この題材をこの場所でやるべきだったのかどうかは、意見の分かれるところなのではないだろうか。同時に、そのような現実との接点があることが、「恐怖の村」シリーズらしいところだともいえ、その意味で本作は、シリーズ中で最も危険な作品だったといえるかもしれない。



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