『カムカムエヴリバディ』2代目モモケンに重なるかつての算太 受け取った父からのバトン

 時代劇俳優の“モモケン”こと、初代桃山剣之介(尾上菊之助)がデビューした年。ヒロイン・ひなた(川栄李奈)の大叔父にあたる算太(濱田岳)は、近所の家から本作の重要な要素となるラジオを盗んだ。そこから数十年の時を経て、モモケンの息子と出会うことになるとは知らずに。

 尾上菊之助が一人二役で演じるモモケン親子の確執と和解が描かれている『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第18週。

 「バトンを渡して、わたしは生きる。」とは、ひなた編のキャッチコピーとして公式サイトに添えられている言葉だが、私たちは無意識のうちに誰かからバトンを受け取り、そしてまた誰かに渡している。でも、不器用な者同士はバトンを上手く渡せず落としてしまったり、そのことに気づかないまま走っていってしまったり……。モモケン親子もそうだ。

 映画一筋だった父・初代モモケンと、「これからはテレビの時代だ」と違う道に進んだ息子の団五郎(のちの二代目モモケン)。条映は対立していた二人を映画『棗黍之丞』シリーズで共演させ、仲直りさせようと目論んでいたが、父は映画を見限った息子の出演を許さなかった。

 さらに初代が当てつけのように団五郎が演じるはずだった役に大部屋俳優の虚無蔵(松重豊)を抜擢したことで、親子の溝はより一層深くなる。結局、団五郎は映画が大失敗に終わり失意のうちに亡くなった父の名前を継ぎ、二代目モモケンとして華々しくデビュー。初代の代表作をテレビシリーズとして生まれ変わらせた。

 しかし、それは決して報復のためなんかじゃない。銀幕のスターとして人々の憧れだった父をも超える存在になるためだ。もちろん、「(虚無蔵は)お前よりよほどいい役者だ」と言われた団五郎は父に“拒絶”されたと思い込み、一度は渡されたバトンを落としかけた。そこまで自分が許せないのなら、お望み通り好き勝手やってやろう……そんなふうにも思ったかもしれない。だけど、そんなふてくされた団五郎から素直な気持ちを引き出し、再びその手にしっかりとバトンを握らせてくれた人がいた。映画館で偶然出会った算太である。

 何の因果か、彼もまたやることなすことが全て父親の神経を逆撫でし、ついには分かり合えなかった男だ。算太は岡山の和菓子屋「たちばな」の長男として生まれ、菓子修行を始めるも、父・金太(甲本雅裕)の跡を継ぐ気は一切なくサボってばかり。ようやくダンスという夢中になれるものを見つけたと思いきや、借金を踏み倒して行方をくらませた息子を金太は許さなかった。

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