『カムカムエヴリバディ』弟・桃太郎役で青木柚が登場 これまでにない“陽”の演技への期待
独特な憂いを放つ若手俳優がいる。青木柚だ。『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)では、“憂い”とは対極にいるようなひなた(川栄李奈)だが、その弟・桃太郎を演じることが発表されている。現在、子役が演じている桃太郎は、歳の離れた姉にもはっきりと意見し、物怖じしないどこかおませな男児で、野球に夢中だ。
青木は本作が朝ドラ初出演。これまでどこか湿度の高い役どころが続いた青木が、あの賑やかな大月家ですくすくと育った少年をどう演じるのか今から楽しみで仕方ない。
そう言えば、同じく野球少年(元野球部ではあるが)を演じたのはよるドラ『きれいのくに』(NHK総合)での誠也役だ。野球部を辞めた後も彼が坊主頭を続ける理由が、作品の主題にも関する重要な役どころだが、青木は“自分でもまだ自身の輪郭を発見する前の手探りな状況”特有の葛藤や不安、心の機微、揺らぎを生々しく見せてくれていた。そこにはずっと彼の演じる役柄が自分自身と対話し、反芻している時間や痕跡が滲み出る。
石川瑠華とのW主演映画『うみべの女の子』で熱演した磯部も、じっとりとした空気感、そして“異質感”が常に付き纏う。溜めて溜めて溜めて自分一人では堪えきれなくなった感情を、それでも抑えて少しずつ溢れ出して……という、決壊寸前のダム、今にも雨が降り出しそうな空かのような存在感をずっと放ち続けた。破壊や崩壊の“予兆”を常に感じさせ続ける磯部は、誰しもが経験する思春期特有の得体の知れない底知れぬ不安や怒り、不安定さ、極端さを立ち上らせた。抑えがたい衝動や苛立ちに自身が引き裂かれそうになりながらそこに立っている磯部の姿はいつだってヒリついていて、他人も自分をも常に試しているかのようで痛々しいまでに切実で目が離せなくなる。彼が実年齢以上に、思春期の渦中にいるキャラクターを演じることが多い所以もここにあるのだろう。
集団の中にいて、決して派手な役どころを演じる訳ではなく圧倒的に内向的なキャラクター側にいることの多い青木だが、自然と彼を目で追ってしまうのは、なんだかその役柄と周囲の、世界との距離の取り方に危うさを感じるからかもしれない。